京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第19週:平成30年5月7日~13日)No.311
京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生
感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、6.82件と増加しました。乙訓では定点当たり17.00件と顕著に増加していますので注意してください。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。
全数報告対象の感染症は、結核が9件、細菌性赤痢が4件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が4件、アメーバ赤痢・カルバペネム耐性腸内細菌感染症と百日咳がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、流行性角結膜炎が9件報告されました。
「赤痢」と呼ばれる病気には、細菌性赤痢とアメーバ赤痢があります。今週定点報告においてともに報告されていますが細菌性赤痢の原因は赤痢菌(Shigella)であり、アメーバ赤痢は赤痢アメーバという原虫の感染を原因とする別の病気です。
細菌性赤痢は、患者の便に汚染された手指や食べ物を原因として、経口感染により拡がります。感染力が強く少ない菌量でも感染しうるため、二次感染に対して注意が必要です。
アメーバ赤痢の原因は大腸に寄生する赤痢アメーバと呼ばれる原虫の一種です。栄養型(いわゆるアメーバ運動をして活発に動く)とシスト型の2つの形態を取り、外部環境に強いシスト型を摂取することで経口感染します。具体的には海外旅行などで汚染された飲食物を摂取することや性行為が原因で感染し、典型例は粘血便などの下痢、テネスムス(しぶり腹)、腹痛で発症します。まれに肝膿瘍や脳・肺・皮膚などの腸管外に合併症を来します。
原因は異なりますが、ともに赤い便(赤痢)をきたし、感染地域である海外で生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどから感染することが多いです。海外渡航の折には、厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページ(http://www.forth.go.jp)などで、前もって渡航先の国の感染情報などを見て、予防策を確認するようにしてください。
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