京都府感染症情報センターからのコメント
(2021年第48週:令和3年11月29日~令和3年12月5日)No.493
京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生
令和3年第48週の報告です。感染性胃腸炎が定点あたり6.70件と増加しました。手足口病は定点あたり1.87件と減少しました。その他の感染症の報告数に大きな変化はありません。手足口病は京都市伏見区、南区と乙訓、中丹西で警報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が2件、侵襲性肺炎球菌感染症、梅毒がそれぞれ2件報告されました。また、基幹定点および眼科定点の報告はありません。
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は小児、成人の肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの原因になります。成人の市中肺炎の20%は肺炎球菌が原因といわれていますが、大半は菌血症を伴いません。侵襲性肺炎球菌感染症とは、本来無菌環境である髄液又は血液から肺炎球菌が検出された感染症のことをいいます。髄膜炎、菌血症を伴う肺炎、敗血症などが特に問題とされており、小児および高齢者を中心に患者報告があります。 感染経路は、主に飛沫感染とされています。1歳児の30-50%が肺炎球菌を鼻腔に保菌しており、成人の保菌率は3-5%程度と低いです。感染しても必ず発症するわけではありません。
潜在期間は不明で、症状は小児と成人で異なります。小児では発熱を初期症状とした菌血症が多くみられ、肺炎を伴うことはありません。また髄膜炎は、中耳炎に続いて発症することがあります。成人では、発熱、咳、痰、息切れを初期症状とし、肺炎を伴うことが多いです。髄膜炎の場合、頭痛、発熱、痙攣、意識障害、髄膜刺激症状等の症状を示します。
標準予防策に加えて、症状に応じて接触予防策・飛沫予防策を行うことが大切です。髄膜炎を除き、ペニシリン系抗菌薬が基本となります。髄膜炎や菌血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を疑う場合はペニシリン耐性株も考慮した抗菌薬(バンコマイシン+セフトリアキソンなど)で治療を開始することもあります。耐性株が出現し,治療はより困難になってきています。 ペニシリン,アンピシリン,その他のβ-ラクタム系薬剤に対して高度耐性を示す菌株が世界中でみられています。
侵襲性肺炎球菌感染症の予防にはワクチンの接種が有効です。我が国では5歳未満の小児に対して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が定期接種され、65歳以降の高齢者に対して、23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV23)が定期接種されています。
新型コロナウイルス感染症の京都府内での発生状況については、 こちらをご覧ください。
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