京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第25週:平成30年6月18日~6月24日)No.317
京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生
感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.73件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。
全数報告対象の感染症は、結核が8件、A型肝炎が2件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症と播種性クリプトコックス症がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、百日咳が5件報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が5件報告されました。
播種性クリプトコックス症の報告が1件ありました。クリプトコックス属真菌は、主に肺や皮膚から感染して病巣を形成します。肺クリプトコックス症が多いですが、中枢神経系に播種して脳髄膜炎を起こすこともあります。感染源としてハトなどの鳥の糞との関与が示唆されており、環境中に浮遊する真菌を吸入して、あるいは創傷のある皮膚などを介して感染します。腎疾患、膠原病、悪性腫瘍、糖尿病やステロイド投与などがクリプトコックス症のリスク因子であり、ヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)感染はクリプトコックス脳髄膜炎のハイリスクとなります。免疫不全の場合、脳髄膜炎として発症することが多く、発熱、頭痛などの症状を呈します。免疫不全でない場合、中枢神経系の病変では、痙攣、意識障害など重篤な症状がみられる症例から、発熱、頭痛等の典型的な脳脊髄炎症状を欠く症例まで様々とされます。中枢神経系以外の眼、皮膚、骨等への播種では皮疹など局所に応じた症状を呈します。治療として、播種性病変の場合、アムホテリシンB製剤とフルシトシンを併用して初期治療を行い、その後アゾール系薬にスイッチして維持療法が行われます。
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