京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第15週:平成31年4月8日~平成31年4月14日)No.358

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり6.55件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が今週も増加しています。その他の感染症は、大きな変化はありません。乙訓と京都市右京区での伝染性紅斑は、今週も引き続き警報レベルとなっています。また、水痘は乙訓で定点あたり1.25件、京都市西京区で1.00件と注意報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が9件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、レジオネラ症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が1件、百日咳が4件、風しんが2件報告されました。また、基幹定点の報告として、細菌性髄膜炎とマイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が18件報告されました。眼科定点の報告として流行性角結膜炎が3件報告されました。

レジオネラ症の報告数が年々増加しています。2017年の報告数は、全国で1722件と現在の調査方法となった1999年以降最多でした。ここ10年で約2.5倍に増加しています。増加の原因としては、検査方法の簡便化や抵抗力の少ない高齢者の増加によるものが疑われていますが、はっきりとはわかっていません。レジオネラ菌は、水中や土の中に存在し、給湯設備や空調の冷却塔、加湿器のなかで増殖します。

特に高齢者や糖尿病などに罹患した患者など抵抗力の少ない人で感染が起こりやすく死亡率が高くなることが知られています。水滴とともに吸入することで感染し、発熱や肺炎を発症します。レジオネラ菌は、36度前後で最も繁殖しますが、高温や塩素消毒で死滅します。予防として、感染源となる給湯系、冷却塔、浴場、加湿器などの、水環境に対する衛生管理が重要です。治療にはニューキノロンやマクロライド系の抗菌薬が著効します。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第14週:平成31年4月1日~平成31年4月7日)No.357

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり5.89件と増加しています。その他の感染症は大きな変化はありません。乙訓と京都市右京区での伝染性紅斑は、今週も引き続き警報レベルとなっています。また、水痘は京都市上京区で定点あたり1.00件、乙訓で定点あたり1.67件と注意報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が10件、レジオネラ症が1件、カルバベネム耐性腸内細菌感染症・侵襲性肺炎球菌感染症と百日咳がそれぞれ3件、報告されました。また、基幹定点の報告としてロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、眼科定点の報告で流行性角結膜炎が3件報告されました。

風疹の患者報告数が増加しています。2019年第1~14週の累積患者数は1202人と1000人を超えました。風疹は2013年の流行以降、年間100人前後で推移していましたが、2018年には2937人が報告され、2019年もすでに1000人を超える報告があります。関東地方からの報告が多いですが、京都府からも複数の報告がされています。報告されている風疹患者の中心は、過去にワクチンを受けておらず、風疹ウイルスに感染したことがない、抗体を保有していない集団であり、これらの方々への対策が重要です。また妊娠出産年齢の女性の抗体保有率は95%以上と高値ですが、抗体価が低い方もおられますので、妊娠20週頃までの風疹ウイルス感染には注意が必要です。近年、風疹患者の中心は小児から成人へとうつっており、先天性風疹症候群の予防のためにも女性は妊娠前2回の風疹ワクチンを接種し、さらに周囲の方のもワクチン接種を行うことが重要です。風疹はワクチンで予防可能な疾患です。

厚生労働省はこれまで風疹の定期接種を受ける機会のなかった男性を対象に抗体検査とワクチン接種を行うことを発表しましたので、お住いの自治体ホームページなどで確認してください。京都府風疹情報

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第13週:平成31年3月25日~平成31年3月31日)No.356

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり5.62件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が漸増しています。その他の感染症は大きな変化はありません。乙訓と京都市右京区での伝染性紅斑は、今週も引き続き警報レベルとなっています。また、水痘は乙訓で定点あたり1.25件と注意報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が3件、腸管出血性大腸菌感染症が3件、A型肝炎が1件、後天性免疫不全症候群が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、梅毒が5件、百日咳が6件、風しんが2件報告されました。また、基幹定点から細菌性髄膜炎が1件、眼科定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が11件報告されました。

ロタウイルスによる感染性胃腸炎の報告が多く見られました。ロタウイルスは、特に乳幼児の重症急性胃腸炎の主要な原因病原体で、ロタウイルス感染症により世界の5歳未満の小児で約50万人の死亡があるとされています。その多くは発展途上国で起こっていますが、ロタウイルスは、感染力が非常に強いため衛生状態が改善されている先進国でも感染は多く見られ、生後6カ月から2歳をピークに、5歳までにほぼすべての児がロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症するとされています。通常2日間の潜伏期間をおいて発症し、発熱と嘔吐から症状が始まり24~48時間後に頻繁な水様便を認めます。成人でも感染、発病しピークは20~30歳代と50~60歳代に認められます。

主な感染経路は糞口感染ですのでオムツの適切な処理、手洗いの徹底、汚染された衣類等の次亜塩素酸消毒などによる処置が感染拡大防止の基本となります。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第10週:平成31年3月4日~平成31年3月10日)No.353

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり4.86件、その他の感染症も大きな変化はありません。京都市山科区で伝染性紅斑が定点あたり1.40件と警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は、結核が10件、デング熱が2件、侵襲性肺炎球菌感染症・百日咳と風しんがそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎が3件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が6件、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が1件報告されました。

デング熱の報告が1件ありました。蚊が媒介するウイルス感染症で、3~7日の潜伏期間の後に突然の発熱で発症し、筋肉痛、関節痛、眼の奥の痛みを伴います。体幹から拡がる発疹を伴い、7日間ほどの経過で改善することが多いです。国内感染症例の報告もありましたが、多くは熱帯・亜熱帯地域(特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国)への海外渡航時に感染したものです。デングウイルスに対する抗ウイルス薬は無く、症状に応じて鎮痛剤の投与や輸液が行われます。またワクチンもないため、蚊に刺されないように予防対策をすることが重要となります。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第9週:平成31年2月25日~平成31年3月3日)No.352

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり4.70件、インフルエンザが4.58件となっています。その他の感染症も大きな変化はありません。南丹で水痘が定点あたり2.40件と警報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が6件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症・急性脳炎と梅毒がそれぞれ2件、侵襲性肺炎球菌感染症と風しんが1件、百日咳が3件報告されました。また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎が2件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が2件報告されました。

南丹地域で水痘の報告が増加しています。水痘は例年冬から春にかけて増加する水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされる発疹性の病気です。空気感染、飛沫感染、接触感染により広がり、潜伏期間は感染から2週間程度と言われています。発疹の発現する前から発熱が認められ、典型的な症例では、発疹は紅斑から始まり、水疱、膿疱を経て痂皮化して治癒するとされています。発疹出現後、大体6日間前後は感染性があるとされます。治療は軽症例では対症療法が基本ですが、重症例や重症化のおそれのある場合、抗ウイルス薬が使用されます。9歳以下での発症が90%以上を占めると言われています。合併症としては、皮疹への細菌感染、熱性痙攣、ウイルス性肺炎、脳炎、無菌性髄膜炎などがあります。成人での水痘も稀に見られますが、成人発症の場合、水痘そのものが重症化する危険が高いと言われています。

発症予防に、水痘ワクチン接種が有効です。1回の接種により重症の水痘をほぼ100%予防でき、2回の接種により軽傷の水痘も含めてその発症を予防できると考えられています。平成26年より水痘ワクチンは定期接種となっていますので忘れずに接種しましょう。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第8週:平成31年2月18日~平成31年2月24日)No.351

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は定点あたり7.29件と減少傾向です。乙訓と京都市左京区、南区、伏見区では警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、アメーバ赤痢・急性弛緩性麻痺・水痘(入院例)がそれぞれ1件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症・百日咳と風しんがそれぞれ2件、侵襲性肺炎球菌感染症が4件報告されました。

また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が2件報告されました。

今年に入りアメーバ赤痢、細菌性赤痢が散見されます。「赤痢」と呼ばれる病気には、細菌性赤痢とアメーバ赤痢があります。今週定点報告において報告されたアメーバ赤痢は、赤痢アメーバという原虫の感染を原因とする病気です。

アメーバ赤痢の原因は、大腸に寄生する赤痢アメーバと呼ばれる原虫の一種です。栄養型(いわゆるアメーバー運動をして活発に動く)と嚢子型(シスト)、2つの形態を取り、外部環境に強い嚢子型(シスト)を摂取することで経口感染します。具体的には、海外旅行などで汚染された飲食物を摂取することや性行為が原因で感染し、典型例は粘血便などの下痢、テネスムス(しぶり腹)、腹痛で発症します。まれに肝膿瘍や脳・肺・皮膚などの腸管外に合併症を来します。

細菌性赤痢と原因は異なりますが、ともに赤い便(赤痢)をきたし、感染地域である海外で生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどから感染することが多いので海外旅行の際には注意してください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第6週:平成31年2月4日~平成31年2月10日)No.349

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は定点あたり22.37件と今週減少傾向です。府内の全地域において、引き続き警報レベルとなっており、ピークは過ぎたと思われますが引き続き感染予防に留意してください。

全数報告対象の感染症は、結核が9件、細菌性赤痢が1件、A型肝炎とレジオネラ症がそれぞれ2件、侵襲性肺炎球菌感染症と麻しんがそれぞれ2件、水痘(入院例)・風しんがそれぞれ1件、百日咳が3件報告されました。

また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎とロタウイルスによる感染性胃腸炎がそれぞれ1件、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が3件報告されました。

インフルエンザの報告数は3週連続で減少し、ピークは過ぎたと思われます。今年はA香港型のH3N2と2009年に新型インフルエンザとして流行したH1N1が並行して流行しています。H1N1はインフルエンザ脳症を引き起こしやすいとされており、今シーズンではインフルエンザ脳症の患者数は127人報告されています。意識障害や全身性の痙攣などの症状があり、子供に多いですが今シーズンすでに1歳から40代までの5人の死亡が報告されています。

ウイルスの活動は温度と湿度に関係しますので少なくとも3月までは感染に警戒が必要です。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第4週:平成31年1月21日~平成31年1月27日)No.347

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は定点あたり50.44件と今週も高水準です。府内の全地域において、引き続き警報レベルとなっており、乙訓では定点あたり82.43件と特に多い報告となりました。京都市内でも報告数が急増しています。今後さらなる流行の拡大が予想されますので注意してください。

全数報告対象の感染症は、結核が5件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、クロイツフェルト・ヤコブ病・侵襲性インフルエンザ菌感染症・侵襲性肺炎球菌感染症・百日咳がそれぞれ1件、水痘(入院例)と風しんがそれぞれ2件が報告されました。また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎が4件、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が3件報告されました。

29日、京都府内で麻疹の発症が確認されました。今年に入って2人目の発症となります。麻疹ではカタル期に高熱となり、その後一過性に解熱することがありますが、その後再度発熱がおこり全身に発疹が出現します。特徴的なものとして、口腔内のコプリック斑が知られています。

今回は麻疹の診断の前に公共交通機関を利用していたため不特定多数の人と接触している可能性があります。発熱や発疹を認めた際はインフルエンザだけでなく麻疹の可能性も考慮して医療機関に連絡のうえ受診してください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第3週:平成31年1月14日~平成31年1月20日)No.346

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数が定点あたり51.17件と今週も増加しています。府内の全地域において警報レベルとなっており、山城北では定点あたり68.88件と特に多い報告となりました。京都市内でも報告数が急増しています。今後さらなる流行の拡大が予想されますので注意してください。

全数報告対象の感染症は、結核が13件、E型肝炎・オウム病・デング熱とレジオネラ症がそれぞれ1件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症が4件、クロイツフェルト・ヤコブ病・梅毒と麻しんがそれぞれ1件、侵襲性インフルエンザ菌感染症・百日咳と風しんがそれぞれ2件報告されました。また、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が2件報告されました。

インフルエンザの合併症の一つに重度の中枢神経症状を呈するインフルエンザ関連脳症(インフルエンザ脳症)があります。成人例に比べ、0-4歳、5-19歳の報告数が多くなっています。しかし毎シーズン60-100例の報告のうち、成人例は10-35%みられるので注意が必要です。これまでインフルエンザ脳症報告数とインフルエンザ定点あたり報告数は相関しており、今シーズンも今後増加が危惧されます。インフルエンザ脳症の悪化因子として、非ステロイド系解熱剤のうちジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸は小児には基本的に使用しないようにとされているますので、解熱剤が必要な場合はなるべくアセトアミノフェンを使用します。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第2週:平成31年1月7日~平成31年1月13日)No.345

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数が定点あたり35.50件と急激に増加しています。府内の各地域において報告数が増加しており、中丹西では定点あたり49.60件、山城北では46.24件、南丹では43.25件と特に多い報告となりました。京都市内でも報告数が急増しています。今後さらなる流行の拡大が予想されますので注意してください。

全数報告対象の感染症は、結核が3件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、レジオネラ症が1件、アメーバ赤痢・カルバベネム耐性腸内細菌感染症・劇症型溶血性レンサ球菌感染症と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件、百日咳が2件報告されました。また、基幹定点の報告としてロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が10件報告されました。

インフルエンザの報告数が、さらに増加し府内で警報レベルとなりました。例年1月下旬から2月にかけて警報レベルに達することが多いですが、平成28年度、29年度と比較しても早い時期に警報レベルに達しています。2018年第20週~2018年第2週までに検出されたウイルスの状況をみると、AH1pdm09が最も多くB型はまだほとんど分離されていません。インフルエンザは飛沫感染、接触感染で伝播します。飛沫感染対策としての咳エチケット(咳が出ている人がマスクをする)、接触感染対策としての手洗い等を徹底してください。また高齢者や持病で治療中のかたは重症化のリスクが高くなります。医療・福祉施設へ訪問する際は症状が疑われる方は自粛してください。

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