京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第31週:平成30年7月30日~8月5日)No.323

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、3.29件とやや減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。手足口病は定点あたり1.82件となっています。京都市右京区、左京区、伏見区では警報レベルが続いています。その他の感染症は先週までと比べて著変ありませんがヘルパンギーナとRSウイルス感染症が微増傾向です。

全数報告対象の感染症は、結核が13件、腸管出血性大腸菌感染症が3件、日本紅斑熱が1件、急性脳炎・クロイツフェルト・ヤコブ病と播種性クリプトコックス症がそれぞれ1件、 百日咳が6件報告されました。また、基幹定点の報告として、マイコプラズマ肺炎が1件、流行性角結膜炎が9件報告されました。

日本紅斑熱は、日本紅斑熱リケッチアを保有するマダニ(キチマダニ、フタトゲチマダニ)に刺されることにより感染します。刺し口は通常1~2週間ほど残存し、診断の助けとなります。刺されてから2~8日頃から頭痛、高熱、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛などを伴って発症します。高熱とほぼ同時に、紅色の斑丘疹が手足など末梢部から多発します。リンパ節腫脹はあまりみられません。CRP陽性、白血球減少、血小板減少、肝機能異常などは、つつが虫病と同様ですが、つつが虫病に比べDICなど重症化しやすいと報告されています。治療として、βラクタム系抗菌薬は無効であり、テトラサイクリン系抗菌薬やニューキノロン系抗菌薬が使用されます。予防としてワクチンはありません。マダニによる刺咬を避けることが重要です。

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http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第30週:平成30年7月23日~7月29日)No.322

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、3.86件と先週と同水準です。京都市左京区での警報レベルは継続しています。手足口病が定点あたり1.87件となっています。先週の京都市右京区に加え、左京区と伏見区でも警報レベルとなっており注意が必要です。その他の感染症は先週までと比べて著変ありませんが、ヘルパンギーナとRSウイルス感染症が微増傾向です。

全数報告対象の感染症は、結核が9件、腸管出血性大腸菌感染症が7件、アメーバ赤痢・カルバペネム耐性腸内細菌感染症・急性脳炎と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件、百日咳が5件報告されました。また、基幹定点の報告として、無菌性髄膜炎が1件、流行性角結膜炎が8件報告されました。

肺炎球菌は小児、成人の肺炎、中耳炎、副鼻腔炎などの原因になります。成人の市中肺炎の20%は肺炎球菌が原因といわれていますが、大半は菌血症を伴いません。肺炎球菌はときに髄膜炎や菌血症を伴う肺炎を引き起こすことがあり、侵襲性肺炎球菌感染症とよばれます。侵襲性肺炎球菌感染症は小児と高齢者に多く2013年4月から2017年12月までの報告では全患者に対する5歳未満と65歳以上の割合はそれぞれ17%、56%でした。これらの後発年齢の小児及び成人には肺炎球菌ワクチンによる予防接種が実施されています。小児に対しては沈降13価肺炎球菌結合型ワクチンが、65歳以上の成人には23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンが接種されています。

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第29週:平成30年7月16日~7月22日)No.321

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.06件と先週からわずかに増加しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。手足口病が定点あたり1.94件とさらに増加しています。京都市右京区では定点あたり6.00件と今週も警報レベルとなっており注意が必要です。その他の感染症は先週までと比べて著変ありませんが、ヘルパンギーナはやや増加傾向です。

全数報告対象の感染症は、結核が7件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、レジオネラ症が6件、アメーバ赤痢とクロイツフェルト・ヤコブ病がそれぞれ1件、百日咳が3件報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が5件報告されました。

通常秋から冬に流行するRSウイルス感染症ですが、最近では流行時期が前倒しになることがあります。2017年は7月ころから流行が始まり、8月から9月にかけてピークを迎え、年末にかけて減っていくという経過をとりました。原因はよくわかっていませんが、気候が関係しているとの報告もあります。RSウイルス感染症は6か月未満の乳児や先天性の心臓、肺疾患をもっている方、早産時は重症化のリスクが高いので注意が必要です。また、ほぼすべての幼児が2歳までに感染しますが、免疫ができにくいため繰り返し感染することも流行の原因となっています。特に、乳幼児では重症化するおそれがある疾患ですので呼吸器の症状がでた場合は早めに小児科を受診するようにしてください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第28週:平成30年7月9日~7月15日)No.320

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、3.96件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。また食中毒注意報は継続して発令されており、引き続き食べ物の管理には気を付けてください。また手足口病が定点あたり1.81件と増加しています。京都市右京区では定点あたり5.98件と今週も警報レベルとなっており注意が必要です。その他の感染症は先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が10件、E型肝炎が1件、A型肝炎とレジオネラ症がそれぞれ2件、後天性免疫不全症候群・侵襲性肺炎球菌感染症と梅毒がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、マイコプラズマ肺炎が2件、流行性角結膜炎が7件報告されました。

夏風邪として知られるヘルパンギーナ、手足口病が徐々に増加してきています。咽頭結膜炎とともに夏風邪として知られている3種の病気ですが、いずれも感染力の強い疾患です。

ヘルパンギーナは、38度を超える発熱と咽頭の水泡が特徴です。発熱は1-2日で低下しますが、水泡が破れると疼痛を伴いますので、食事や水分摂取が低下し脱水に注意が必要です。手足口病は、先週もコメントした通り、手足や口に水泡ができ爪がむけるなどの症状がでることもあります。プール熱ともいわれる咽頭結膜炎では、風邪の症状に加えて充血や眼脂があらわれます。

いずれの疾患も対処療法で改善しますが、髄膜炎や脳炎、心筋炎などを合併することがあるので注意してください。また発熱や水分摂取不良により脱水が進行することがありますので口当たりのよいものをとるようにしてあげてください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第27週:平成30年7月2日~7月8日)No.319

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.83件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。また7月10日には平成30年第1号となる食中毒注意報が京都府南部地域に発令されました。食中毒注意報は気温や湿度等の条件から食中毒の危険が高まった際に発令されます。

また手足口病が定点あたり1.61件と増加しています。京都市右京区では定点あたり6.00件と警報レベルとなっており注意が必要です。その他の感染症は先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が14件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、A型肝炎が1件、レジオネラ症が3件、後天性免疫不全症候群と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、マイコプラズマ肺炎が2件、流行性角結膜炎が4件報告されました。

エンテロウイルスが原因となる手足口病は、4歳頃までの幼児を中心に主に夏季に流行が見られます。過去には2011年、2013年、2015年に流行がみられました。予後良好な疾患ですが時に急性髄膜炎や脳炎などを引き起こすことが知られており死亡例もみられます。感染後3~5日の潜伏期をおいて、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹が出現します。発熱はあまり見られず38度以下のことがほとんどです。特異的な治療法はなく発疹にたいしても外用薬は用いられません。重要なことは水分補給です。手洗いが重要であり、治療後も便からの感染がありうるので特に排便後の手洗いを徹底してください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第26週:平成30年6月25日~7月1日)No.318

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.53件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が12件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、A型肝炎が2件、レジオネラ症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、百日咳が3件報告されました。また、基幹定点から細菌性髄膜炎が1件、マイコプラズマ肺炎が3件、眼科定点から流行性角結膜炎が6件報告されました。

今週はA型肝炎と腸管出血性大腸菌感染症の報告がありました。どちらも経口感染し食中毒の原因となる疾患です。A型肝炎は、海外の汚染された食物や水の摂取のほか国内ではカキやアサリなどの二枚貝を含む魚介類による食中毒の原因となります。腸管出血性大腸菌は少量の菌で感染を引き起こすことが知られ感染者の便から二次感染を起こします。A型肝炎は、ワクチンによる予防が可能なので、流行地域に渡航する際には接種しておくことが大切です。

腸管出血性大腸菌感染症は、これから流行時期に入りますので、調理器具の消毒を入念に行ってください。また、食事前の手洗いうがいを行って2次感染の予防につとめてください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第25週:平成30年6月18日~6月24日)No.317

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.73件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、A型肝炎が2件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症と播種性クリプトコックス症がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、百日咳が5件報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が5件報告されました。

播種性クリプトコックス症の報告が1件ありました。クリプトコックス属真菌は、主に肺や皮膚から感染して病巣を形成します。肺クリプトコックス症が多いですが、中枢神経系に播種して脳髄膜炎を起こすこともあります。感染源としてハトなどの鳥の糞との関与が示唆されており、環境中に浮遊する真菌を吸入して、あるいは創傷のある皮膚などを介して感染します。腎疾患、膠原病、悪性腫瘍、糖尿病やステロイド投与などがクリプトコックス症のリスク因子であり、ヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)感染はクリプトコックス脳髄膜炎のハイリスクとなります。免疫不全の場合、脳髄膜炎として発症することが多く、発熱、頭痛などの症状を呈します。免疫不全でない場合、中枢神経系の病変では、痙攣、意識障害など重篤な症状がみられる症例から、発熱、頭痛等の典型的な脳脊髄炎症状を欠く症例まで様々とされます。中枢神経系以外の眼、皮膚、骨等への播種では皮疹など局所に応じた症状を呈します。治療として、播種性病変の場合、アムホテリシンB製剤とフルシトシンを併用して初期治療を行い、その後アゾール系薬にスイッチして維持療法が行われます。

 

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(2018年第24週:平成30年6月11日~6月17日)No.316

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、6.27件と先週から減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、レジオネラ症が2件、劇症型溶血性レンサ球菌感染症と百日咳がそれぞれ1件 報告されました。また、基幹定点の報告として、流行性角結膜炎が6件報告されました。

腸管出血性大腸菌は、汚染された水や食品(肉、野菜等)などを介して経口感染し食中毒の原因となることが知られており、溶血性尿毒症症候群(HUS)など重篤な合併症を引き起こすこともあります。例年6月から10月頃までの夏場に多く報告されています。少量の菌で感染しうるため、患者や保菌者の便から2次感染します。食肉を十分加熱処理し、細菌を死滅させることが最も重要ですが、調理の途中で調理器具や食品が汚染されることにより食中毒につながります。

そのため、調理器具の消毒・手入れなどの衛生に留意することも食中毒の予防に重要です。食事前の手洗いを十分に行うことでヒトからヒトへの2次感染を予防してください。また、腸管出血性大腸菌に限らず細菌による食中毒は夏期に多くなっていますのであわせて注意してください。

 

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(2018年第23週:平成30年6月4日~6月10日)No.315

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、7.69件と先週までと同水準です。京都市左京区では定点あたり23.00件と警報レベルとなっています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が7件、重症熱性血小板減少症候群が1件、アメーバ赤痢と百日咳がそれぞれ1件 、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。

また、基幹定点の報告として、マイコプラズマ肺炎とロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、流行性角結膜炎が2件報告されました。

重症熱性血小板減少症候群は、2011年に特定されたSFTSウイルスに感染することによって引き起こされる病気で、発熱と消化器症状や血小板減少による出血傾向などを発症し、重症化することもあります。国内では2013年1月に初めて感染が確認され以後、西日本を中心に報告があります。SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染し、致死率は6.3~30%と報告されています。マダニは屋外に生息しており、家庭内に生息するダニとでは全く種類が異なります。抗ウイルス薬やワクチンはありませんので、マダニに咬まれないようにすることが重要です。森林や草地などから戻ったら、特にわきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭部などをチェックし、もし吸血中のマダニに気がついた場合は、医療機関(皮膚科)で処置(マダニの除去、洗浄など)を受けてください。

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(2018年第22週:平成30年5月28日~6月3日)No.314

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、7.88件と全国的に上昇しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、細菌性赤痢と腸管出血性大腸菌感染症がそれぞれ1件、ウイルス性肝炎・急性脳炎・クロイツフェルト・ヤコブ病がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、無菌性髄膜炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、流行性角結膜炎が6件報告されました。

感染性胃腸炎の報告が増加しています。例年12月にピークがありますが20週前後にも増加し、夏に向けてやや減少していく傾向にあります。1歳前後が最も多く、5歳以下で約6割を占めていますが家庭内での感染拡大も懸念されますのでご注意ください。

クロイツフェルト・ヤコブ病の報告が1件ありました。クロイツフェルト・ヤコブ病は、正常プリオン蛋白が何らかの理由で伝播性を有する異常プリオン蛋白に変化し、主に中枢神経内に蓄積することにより急速に神経細胞変性をおこす稀な致死性疾患であるプリオン病の一種です。病因により、特発性(孤発性)、プリオン蛋白遺伝子変異による遺伝性、他のプリオン病からの感染による獲得性(医原性、変異型)の3種類に分類されています。2003年より五類感染症に分類されており、診断後7日以内に保健所へ報告することが義務づけられています。本疾患の有病率は100万人に1人前後で、男女差はなく、発病は50~70歳代に多く、わが国のサーベイランス調査によると、孤発性が76.5%、遺伝性が19.0%、獲得性が3.9%となっています。治療は確立されておらず、孤発性症例では進行が速く1~2年で死亡の転帰をとりますが、遺伝性や一部の孤発性症例は進行が遅く数年に及ぶものもあります。

 

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