京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第20週:平成30年5月14日~20日)No.312

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、7.27件と増加しました。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、A型肝炎とレジオネラ症がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症と百日咳がそれぞれ3件、梅毒が2件、風しんが1件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、急性出血性結膜炎が1件、流行性角結膜炎が9件報告されました。

発疹と発熱を伴う疾患は様々です。症状のみでの正確な診断は困難ですが、発熱や発疹のパターンはある程度異なっています。乳幼児期に多い突発性発疹では、まず40度近い高熱が出現し、解熱とともに全身性の発疹が出現します。

麻疹ではカタル期に高熱となり、その後一過性に解熱することがありますが、その後再度発熱がおこり全身に発疹が出現します。特徴的なものとして口腔内のコプリック斑が知られています。一方、風疹では発熱は全体の半数ほどにしかみられず麻疹に比べて高熱の期間は短いことが多いです。発疹は首の回りからはじまって全身に広がります。風疹に伴う最大の問題は、感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が感染したことにより、風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群が出現することです。

女性の方は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要です。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第19週:平成30年5月7日~13日)No.311

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、6.82件と増加しました。乙訓では定点当たり17.00件と顕著に増加していますので注意してください。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が9件、細菌性赤痢が4件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が4件、アメーバ赤痢・カルバペネム耐性腸内細菌感染症と百日咳がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、流行性角結膜炎が9件報告されました。

「赤痢」と呼ばれる病気には、細菌性赤痢とアメーバ赤痢があります。今週定点報告においてともに報告されていますが細菌性赤痢の原因は赤痢菌(Shigella)であり、アメーバ赤痢は赤痢アメーバという原虫の感染を原因とする別の病気です。

細菌性赤痢は、患者の便に汚染された手指や食べ物を原因として、経口感染により拡がります。感染力が強く少ない菌量でも感染しうるため、二次感染に対して注意が必要です。

アメーバ赤痢の原因は大腸に寄生する赤痢アメーバと呼ばれる原虫の一種です。栄養型(いわゆるアメーバ運動をして活発に動く)とシスト型の2つの形態を取り、外部環境に強いシスト型を摂取することで経口感染します。具体的には海外旅行などで汚染された飲食物を摂取することや性行為が原因で感染し、典型例は粘血便などの下痢、テネスムス(しぶり腹)、腹痛で発症します。まれに肝膿瘍や脳・肺・皮膚などの腸管外に合併症を来します。

原因は異なりますが、ともに赤い便(赤痢)をきたし、感染地域である海外で生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどから感染することが多いです。海外渡航の折には、厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページ(http://www.forth.go.jp)などで、前もって渡航先の国の感染情報などを見て、予防策を確認するようにしてください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第18週:平成30年4月30日~5月6日)No.310

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、2.97件と減少しました。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が1件、レジオネラ症が2件、アメーバ赤痢が1件報告されました。また、基幹定点の報告として、細菌性髄膜炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が5件、流行性角結膜炎が6件報告されました。

沖縄県は麻疹の感染のピークは過ぎ、終息に向かいつつあるとしています。沖縄県内で、調査中も含めた検査診断例は5月9日の時点で95例と報告されており、予防接種を2回行った方にも感染者がでています。

また大型連休で多くの人が国内外で移動をしたことにより依然として感染拡大が懸念されます。

母子手帳などでワクチン接種歴がない、もしくは1回のみの方はワクチン接種を行い予防してください。非常に感染力が強いので、発熱に加えて特徴的な発疹が見られた際は周囲への感染に留意してすぐに医療機関を受診してください。

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第16週:平成30年4月16日~22日)No.308

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.13件と横ばいですが4週連続で増加しています。京都市左京区の警報レベルは持続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が20件、アメーバ赤痢・カルバベネム耐性腸内細菌感染症と百日咳がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、流行性角結膜炎が10件報告されました。

百日咳はけいれん性の咳発作を特徴とする疾患であり、主に小児期にみられます。しかし、ワクチン接種をしていない方や、接種後免疫の低下した成人でも発症がみられるため注意が必要です。

2017年12月31日までは、指定届出機関である全国約3,000カ所の小児科定点医療機関が週毎に保健所に届け出なければならないとされていました(5類感染症)が、2018年1月1日から、適切な検査診断で百日咳と診断された症例は年齢を問わず全数把握疾患として報告するようにと改正されました。診断した医師は、都道府県知事に対して、患者の年齢、性別等を7日以内に届け出なければならないとされていますのでご協力お願いします。また学校保健安全法では、第2種感染症に指定されており咳が止まるまで、もしくは適正な抗菌薬治療が終了するまでは出席停止となっています。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第15週:平成30年4月9日~15日)No.307

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.58件と横ばいです。京都市左京区の警報レベルは持続しており、乙訓で定点あたり10.50件となっています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が5件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、日本紅斑熱が1件、アメーバ赤痢・カルバベネム耐性腸内細菌感染症・劇症型溶血性レンサ球菌感染症がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が3件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、流行性角結膜炎が8件報告されました。

今週は様々な疾患の報告がありました。日本紅斑熱は、ダニが媒介するリケッチアによる感染症です。2-8日の潜伏期ののち発熱、発疹で発症します。同様の症状を呈するツツガムシ病にくらべ潜伏期間が短いことと、発疹が比較的四肢末端に多くみられることが特徴です。他のダニ媒介感染症と同様に屋外での作業後は室内に持ち込まないように注意しましょう。

また、3月23日、沖縄県内を旅行中の台湾からの旅行客が麻疹と診断されました。以降、この患者と接触歴のあった二次感染例を中心に、沖縄県内では麻疹患者の発生が続いています。さらに県外でも沖縄旅行後の10代男性の麻疹感染が報告されており、引き続き、沖縄県内及び県外での感染拡大が懸念されます。麻疹はワクチンにより予防可能です。定期接種の対象者は接種対象期間になったら速やかに接種を受けることが重要です。また、1 歳以上で2回の接種歴または検査診断された麻疹の罹患歴がない方は麻疹含有ワクチン(麻疹単抗原(単味)ワクチン、麻疹風疹混合ワクチン(MR ワクチン))を接種することを検討してください。3月17日以降に沖縄に滞在し発熱、咳、鼻汁、発疹などの症状があった場合は医療機関に滞在歴があることを伝えたうえで受診してください。

医療機関では麻疹の可能性を考慮し、感染拡大予防に努めるとともに、麻疹(疑い例含む)診断時には保健所へ連絡の上検体(血液、尿、咽頭拭い液)の確保をお願いいたします。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第14週:平成30年4月2日~8日)No.306

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.56件とやや増加しました。京都市左京区の警報レベルは持続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありませんが、突発性発疹と水痘が報告数上位に入っています。

全数報告対象の感染症は、結核が12件、レジオネラ症が1件、侵襲性インフルエンザ菌感染症と水痘(入院例)がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が5件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、流行性角結膜炎が3件報告されました。

水痘(入院例)の報告がありました。9歳以下の患者が90%以上を占める小児の病気「水ぼうそう」で、毎年冬から春にかけて流行がみられます。水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)の初感染によって発症し、小児では一般に軽症ですが、多数の合併症が存在し、将来の帯状疱疹の発症リスクなどもあるウイルス感染症です。

典型例では、発疹は紅斑から始まり、水疱、膿疱を経て痂皮化して治癒します。発疹の出現前から発熱を認め、出現後も約6日間は感染性があるとされていますので、この間の二次感染にご注意ください。重症のハイリスク群として15歳以上、乳児期後半、免疫不全患者、妊婦等が挙げられます。

予防に有効な水痘ワクチンが2014年10月から定期接種化され、生後12か月~生後36か月に至るまでに3か月以上(標準的には半年から1年)の間隔をおいて2回の接種を行うことになっています。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第13週:平成30年3月26日~4月8日)No.305

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.18件とやや増加しました。京都市左京区で定点あたり13.25件と警報レベルとなっています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が4件、アメーバ赤痢が1件 、侵襲性肺炎球菌感染症が3件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、流行性角結膜炎が4件報告されました。

「赤痢」と呼ばれる病気には、細菌性赤痢とアメーバ赤痢があります。今週定点報告において報告されたアメーバ赤痢は赤痢アメーバという原虫の感染を原因とする病気です。 アメーバ赤痢の原因は大腸に寄生する赤痢アメーバと呼ばれる原虫の一種です。栄養型(いわゆるアメーバー運動をして活発に動く)とシスト型2つの形態を取り、外部環境に強いシスト型を摂取することで経口感染します。具体的には海外旅行などで汚染された飲食物を摂取することや性行為が原因で感染し、典型例は粘血便などの下痢、テネスムス(しぶり腹)、腹痛で発症します。まれに肝膿瘍や脳・肺・皮膚などの腸管外に合併症を来します。細菌性赤痢と原因は異なりますが、ともに赤い便(赤痢)をきたし、感染地域である海外で生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどから感染することが多いです。

海外渡航の折には、厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページなどで、前もって渡航先の国の感染情報などを見て、予防策を確認するようにしてください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第12週:平成30年3月19日~25日)No.304

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

今週、インフルエンザの報告数は定点あたり4.22件となり府内のすべての地域において警報レベル以下となりました。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.00件とよこばいです。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が7件、レジオネラ症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が2件、眼科定点から流行性角結膜炎が8件 報告されました。

2017/2018シーズンのインフルエンザの報告者数は例年に比べ大きく上回りました。ピークであった2018年第5週の全国での定点あたりの報告数は54.33件と1999年4月以降最高となっています。定点医療機関からの報告をもとにした、全国の医療機関を受診した患者数の推計も、2018年第3週から第6週の期間で推計約239~283万人と、近年のピーク時に観察される、週間200万人前後を大きく上回りました。今シーズン第10週までの累積推計受診者数は約2104万人でした。同様に累積入院患者数は18653例とこちらも近年を上回っており、特に70歳以上の高齢者が9955例(53%)を占めました。

近年は、AH3亜型もしくはAH1pdm09亜型が1年間隔で流行の主体となっていたが、今シーズンは、流行の開始頃からB型の割合が高く、B型が流行の主体となっていることが特徴でした。過去にもB型が多くみられた年は大きな流行シーズンとなっています。今年のピークは過ぎましたが、日ごろからの手洗い、うがいなどの手指衛生を徹底し、咳エチケットを守りましょう。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第11週:平成30年3月12日~3月18日)
No.303

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週、定点あたり7.49件と終息に向かっています。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.29件とやや増加しました。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が13件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、アメーバ赤痢と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件 報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、眼科定点から流行性角結膜炎が3件報告されました。

レジオネラ症の報告数が年々増加しています。2017年の報告数は全国で1722件と現在の調査方法となった1999年以降最多でした。ここ10年で約2.5倍に増加しています。増加の原因としては、検査方法の簡便化や抵抗力の少ない高齢者の増加によるものが疑われていますがはっきりとはわかっていません。レジオネラ菌は水中や土の中に存在し、給湯設備や空調の冷却塔、加湿器のなかで増殖します。特に高齢者や糖尿病などに罹患した患者など抵抗力の少ない人で感染が起こりやすく死亡率が高くなることが知られています。水滴とともに吸入することで感染し、発熱や肺炎を発症します。レジオネラ菌は36度前後で最も繁殖しますが、高温や塩素消毒で死滅します。予防として、感染源となる給湯系、冷却塔、浴場、加湿器などの、水環境に対する衛生管理が重要です。治療にはニューキノロンやマクロライド系の抗菌薬が著効します。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第10週:平成30年3月5日~3月11日)
No.302

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

インフルエンザの報告数は今週、定点あたり10.77件まで減少しました。南丹以北ではまだ警報レベルとなっているので注意してください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.39件とよこばいです。

その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、カルバベネム耐性腸内細菌感染症が2件、劇症型溶血性レンサ球菌感染症・後天性免疫不全症候群が、それぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が3件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、細菌性髄膜炎が1件、流行性角結膜炎が7件報告されました。

A群溶血性レンサ球菌の感染により罹患する、重症で生命に関わる劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、子供から大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いことが特徴です。学校やご家庭で接触感染し、突然発病する例があり、四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などを初期症状とします。病状の進行も急激で、数十時間以内には軟部組織の壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)などを引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い疾患です。咽頭培養により菌を分離同定するほか、迅速診断キットを利用して診断し、第一選択薬のペニシリン系抗生剤などの抗菌薬で加療することができますので、疑わしい症状をみた際は早めに医療機関を受診してください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/