京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第11週:平成30年3月12日~3月18日)
No.303

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週、定点あたり7.49件と終息に向かっています。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.29件とやや増加しました。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が13件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、アメーバ赤痢と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件 報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、眼科定点から流行性角結膜炎が3件報告されました。

レジオネラ症の報告数が年々増加しています。2017年の報告数は全国で1722件と現在の調査方法となった1999年以降最多でした。ここ10年で約2.5倍に増加しています。増加の原因としては、検査方法の簡便化や抵抗力の少ない高齢者の増加によるものが疑われていますがはっきりとはわかっていません。レジオネラ菌は水中や土の中に存在し、給湯設備や空調の冷却塔、加湿器のなかで増殖します。特に高齢者や糖尿病などに罹患した患者など抵抗力の少ない人で感染が起こりやすく死亡率が高くなることが知られています。水滴とともに吸入することで感染し、発熱や肺炎を発症します。レジオネラ菌は36度前後で最も繁殖しますが、高温や塩素消毒で死滅します。予防として、感染源となる給湯系、冷却塔、浴場、加湿器などの、水環境に対する衛生管理が重要です。治療にはニューキノロンやマクロライド系の抗菌薬が著効します。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第10週:平成30年3月5日~3月11日)
No.302

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

インフルエンザの報告数は今週、定点あたり10.77件まで減少しました。南丹以北ではまだ警報レベルとなっているので注意してください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.39件とよこばいです。

その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、カルバベネム耐性腸内細菌感染症が2件、劇症型溶血性レンサ球菌感染症・後天性免疫不全症候群が、それぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が3件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、細菌性髄膜炎が1件、流行性角結膜炎が7件報告されました。

A群溶血性レンサ球菌の感染により罹患する、重症で生命に関わる劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、子供から大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いことが特徴です。学校やご家庭で接触感染し、突然発病する例があり、四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などを初期症状とします。病状の進行も急激で、数十時間以内には軟部組織の壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)などを引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い疾患です。咽頭培養により菌を分離同定するほか、迅速診断キットを利用して診断し、第一選択薬のペニシリン系抗生剤などの抗菌薬で加療することができますので、疑わしい症状をみた際は早めに医療機関を受診してください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント              

(2018年第9週:平成30年2月26日~3月4日) No.301

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週も低下し、定点あたり17.91件まで減少しました。全国的にも流行はピークアウトしており定点あたり報告数は17.42件でした。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.09件とよこばいです。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、百日咳が1件報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、眼科定点から流行性角結膜炎が5件報告されました。

侵襲性肺炎球菌感染症は、肺炎球菌による髄膜炎や菌血症、敗血症といった重症の病態です。成人では、発熱、咳嗽、息切れを初期症状とした菌血症を伴う肺炎が多くみられますが、小児では、成人と異なり肺炎を伴わず、発熱のみを初期症状とした感染巣のはっきりしない菌血症例が多くみられます。

また細菌性髄膜炎の主な原因菌の一つとなっています。治療はペニシリン系抗菌薬が第一選択です。耐性菌を増やさないために、ペニシリン耐性肺炎球菌に有効な抗菌薬の使用や薬剤感受性試験に基づいた最適な抗菌薬の使用が推奨されています。予防には、肺炎球菌ワクチンの接種が有効です。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第8週:2月19日~25日) No.300

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は3週連続で低下し、定点あたり21.98件まで減少しました。しかしながら依然として府内の全地域で警報レベルとなっており、感染は完全に終息していませんので引き続き注意してください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.21件とよこばいです。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、アメーバ赤痢とカルバペネム耐性腸内細菌感染症がそれぞれ2件、水痘(入院例)が1件、梅毒が3件報告されました。

また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、眼科定点の報告として、急性出血性結膜炎が1件、流行性角結膜炎が6件報告されました。

水痘(入院例)の報告がありました。9歳以下の患者が90%以上を占める小児の病気「水ぼうそう」で、毎年冬から春にかけて流行がみられます。2014年9月から小児科定点からの報告は継続のまま、24時間以上の入院を要した水痘症例が全数届出対象となりました。他疾患で入院中に発症し、その後24時間以上入院した症例も届出対象となっています。

水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)の初感染によって発症し、小児では一般に軽症ですが、多数の合併症が存在し、将来の帯状疱疹の発症リスクなどもあるウイルス感染症です。典型例では、発疹は紅斑から始まり、水疱、膿疱を経て痂皮化して治癒します。発疹の出現前から発熱を認め、出現後も約6日間は感染性があるとされていますので、この間の二次感染にご注意ください。重症のハイリスク群として15歳以上、乳児期後半、免疫不全患者、妊婦等が挙げられます。予防に有効な水痘ワクチンが2014年10月から定期接種化され、生後12か月~生後36か月に至るまでに3か月以上(標準的には半年から1年)の間隔をおいて2回の接種を行うことになっています。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第7週:2月12日~2月18日) No.299

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数はピークをこえ、定点あたり29.40件まで減少しました。先週までに引き続き、府内の全地域で警報レベルとなっており、山城北で37.18件、南丹で36.56件、中丹西で35.80件報告されています。京都市内でも北区以外の全地域で警報レベルとなっています。引き続き感染対策に努めてください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、3.45件とよこばいです。

全数報告対象の感染症は、結核が12件、侵襲性肺炎球菌感染症と梅毒がそれぞれ 2件 報告されました。

また、基幹定点から、マイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、眼科定点から、流行性角結膜炎が1件 報告されました。

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第6週:2月5日~2月11日) No.298

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週に入り、5週ぶりに減少しました。しかし、定点あたり42.67件と依然感染者数は多く、中丹西の59.40件をはじめとして流行は未だおさまっていません。インフルエンザA型、もしくはB型に感染しても、もう一方には再度感染する可能性がありますので、引き続き予防対策に努めてください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は4.19件と横ばいです。

全数報告対象の感染症は結核が6件、ウイルス性肝炎・カルバペネム耐性腸内細菌感染症・梅毒と百日咳がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。

また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が11件報告されました。

今週、百日咳の報告がありました。百日咳はけいれんを伴うような咳発作を来す疾患であり、特に生後6か月未満の乳児では重症化して肺炎や脳炎を起こしたり、死に至る危険性もあります。百日咳にはワクチンが有効であり、現在定期接種の対象となっています。ワクチンにより乳幼児の感染は減少しましたが、ワクチンの抗体価は接種後に徐々に低下していくことがわかっています。

そのため最近では成人の百日咳患者が増えてきています。2010年には成人において百日咳が大流行し、患者全体の50%以上が15歳以上という結果でした。その後も乳幼児に比べ成人の感染が多い状況が続いています。百日咳は抗生物質の内服により治療が可能ですが、大人では症状が軽く気づかないことが多いとされています。

大人が感染源となり、ワクチン接種前の乳児に二次感染する可能性がありますので、子供と接する機会の多い家族の方は咳が続く際は医療機関を早めに受診してください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第5週:1月29日~2月4日) No.297

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

インフルエンザの報告数は今週さらに増加し、定点あたり48.58件となっています。先週に引き続き、府内の全地域で警報レベルとなっています。京都市内でも北区以外の全地域で警報レベルとなっています。これで患者数は4週連続して増加しており、全国的にも爆発的な流行が広がっています。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は4.36件と横ばいです。

全数報告対象の感染症は結核が5件、レジオネラ症が3件、アメーバ赤痢・カルバペネム耐性腸内細菌感染症・後天性免疫不全症候群・侵襲性髄膜炎菌感染症・梅毒が各1件づつ、侵襲性肺炎球菌感染症が3件、百日咳が2件報告されました。

また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が5件、眼科定点から流行性角結膜炎が9件報告されました。

インフルエンザが大流行していますが、ノロウイルスの感染にも注意が必要です。毎年1万人以上の食中毒の原因となるノロウイルス感染症は秋から冬にかけて流行し、感染力が強いことで知られています。ノロウイルスは感染者の便や嘔吐物、あるいは感染者が触れた食品を摂取することにより感染する経口感染の形式で発症します。感染後1、2日の潜伏期間を経て下痢、嘔吐、発熱、関節痛、頭痛などの症状を引き起こします。現在のところ、有効な抗ウイルス薬やワクチンはなく、対処療法が中心となります。

感染力が非常に強いため、嘔吐物や便の処理をする際はウイルスを含んだほこりが舞わないように注意し、次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤などに含まれます)で消毒するようにしてください。食事は加熱してとるようにしましょう。免疫力が低下していると感染しやすくなりますので、体調維持に留意してください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第4週:平成30年1月22日~28日) No.296

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週また増加し、定点あたり44.51件となっています。先週に引き続き、府内の全地域で警報レベルとなっており、乙訓では定点あたり65.86件、南丹では62.11件と猛威をふるっています。京都市内でも北区以外の全地域で警報レベルとなっています。先週に比べて定点当たりの報告数の増加速度は減速していますが、大流行中です。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は4.88件と横ばいです。京都市左京区では警報レベルが持続しています。

全数報告対象の感染症は結核が4件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、侵襲性肺炎菌感染症が2件 報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が3件、眼科定点から流行性角結膜炎が3件報告されました。

インフルエンザに対してはウイルス増殖を抑制する有効な治療薬があります。オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)、ペラミビル(ラピアクタ)の4種類が現在使用可能となっています。これらは内服、吸入、点滴と投与方法が異なる以外に、投与期間も違います。タミフルは異常行動の報告があるため、10代の患者には基本的に投与されません。また、リレンザやイナビルはうまく吸入できないと効果が出ないため、小児や高齢者では注意が必要です。国立感染症研究所と全国地方衛生研究所が共同で行っている耐性株スクリーニングでは、A(H1N1)pdm09の943株のうち1.0%でオセルタミビル、ベラミビル耐性株が検出されました。これらの結果から、どの治療薬でも効果は得られることが期待されますので、状態にあった治療薬で治療を行ってください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第3週:平成30年1月15日~21日) No.295

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週急増し、定点あたり43.67件と警報レベルに入りました。南丹の57.89件を筆頭に府内全地域で定点あたり30件の警報レベルを超えています。京都市内でも北区と下京区を除くすべての区で警報レベルとなっています。地区を問わず感染が拡大していますので、予防を心がけてください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は5.10件と横ばいです。京都市左京区では警報レベルが持続しています。

全数報告対象の感染症は結核が7件、レジオネラ症が1件、アメーバ赤痢・カルバペネム耐性腸内細菌感染症・急性脳炎・劇症型溶血性レンサ球菌感染症・梅毒と百日咳がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が2件、眼科定点から流行性角結膜炎が6件報告されました。

第3週に入り、インフルエンザが全国的に大流行しています。感染者数は全国で第2週と比べて100万人以上増加し、京都府内の学級閉鎖数も延べ300件を超えています。ワクチンを接種した方も感染するリスクはあります。手洗い、うがいを徹底してください。また、ワクチン接種を行った場合、発熱などの症状が出にくいことがあります。

周囲にインフルエンザに感染した方がおられ、関節痛や呼吸器症状などが出た場合は早めに受診し検査をうけるようにしてください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第2週:平成30年1月8日~14日) No.294

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週また増加し、定点あたり22.32件となっています。先週に引き続き、中丹西、南丹、山城南で警報レベルとなっており、丹後、中丹東、乙訓、山城北では注意報レベルとなっています。京都市内では南区で警報レベルとなっているほか、北区と東山区を除く全地域で注意報レベルとなっています。地区を問わず、感染が拡大していますので予防を心がけてください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.71件と横ばいです。京都市左京区では警報レベルが持続しています。流行は完全に収束はしていませんのでご注意ください。中丹西で出血性結膜炎の報告がありました。

全数報告対象の感染症は結核が12件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症と百日咳がそれぞれ1件、後天性免疫不全症候群が2件、侵襲性肺炎菌感染症が5件報告されました。

また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が2件、眼科定点から急性出血性結膜炎が1件、流行性角結膜炎が2件報告されました。

全国的にインフルエンザの報告数が急増しています。西日本を中心に感染が拡大していますが1月下旬から2月にかけて感染のピークを迎えることが予想されています。2017年第49週~2018年第1週までに検出されたウイルスの状況をみると、AH1pdm09が最も多く、次いでB型、AH3型の順でした。インフルエンザは飛沫感染、接触感染で伝播します。飛沫感染対策としての咳エチケット(咳が出ている人がマスクをする)、接触感染対策としての手洗い等を徹底してください。また、高齢者や持病で治療中の方は重症化のリスクが高くなります。医療・福祉施設へ訪問する際は症状が疑われる方は自粛してください。

 

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