京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第15週:平成30年4月9日~15日)No.307

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.58件と横ばいです。京都市左京区の警報レベルは持続しており、乙訓で定点あたり10.50件となっています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が5件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、日本紅斑熱が1件、アメーバ赤痢・カルバベネム耐性腸内細菌感染症・劇症型溶血性レンサ球菌感染症がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が3件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、流行性角結膜炎が8件報告されました。

今週は様々な疾患の報告がありました。日本紅斑熱は、ダニが媒介するリケッチアによる感染症です。2-8日の潜伏期ののち発熱、発疹で発症します。同様の症状を呈するツツガムシ病にくらべ潜伏期間が短いことと、発疹が比較的四肢末端に多くみられることが特徴です。他のダニ媒介感染症と同様に屋外での作業後は室内に持ち込まないように注意しましょう。

また、3月23日、沖縄県内を旅行中の台湾からの旅行客が麻疹と診断されました。以降、この患者と接触歴のあった二次感染例を中心に、沖縄県内では麻疹患者の発生が続いています。さらに県外でも沖縄旅行後の10代男性の麻疹感染が報告されており、引き続き、沖縄県内及び県外での感染拡大が懸念されます。麻疹はワクチンにより予防可能です。定期接種の対象者は接種対象期間になったら速やかに接種を受けることが重要です。また、1 歳以上で2回の接種歴または検査診断された麻疹の罹患歴がない方は麻疹含有ワクチン(麻疹単抗原(単味)ワクチン、麻疹風疹混合ワクチン(MR ワクチン))を接種することを検討してください。3月17日以降に沖縄に滞在し発熱、咳、鼻汁、発疹などの症状があった場合は医療機関に滞在歴があることを伝えたうえで受診してください。

医療機関では麻疹の可能性を考慮し、感染拡大予防に努めるとともに、麻疹(疑い例含む)診断時には保健所へ連絡の上検体(血液、尿、咽頭拭い液)の確保をお願いいたします。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第14週:平成30年4月2日~8日)No.306

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.56件とやや増加しました。京都市左京区の警報レベルは持続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありませんが、突発性発疹と水痘が報告数上位に入っています。

全数報告対象の感染症は、結核が12件、レジオネラ症が1件、侵襲性インフルエンザ菌感染症と水痘(入院例)がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が5件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、流行性角結膜炎が3件報告されました。

水痘(入院例)の報告がありました。9歳以下の患者が90%以上を占める小児の病気「水ぼうそう」で、毎年冬から春にかけて流行がみられます。水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)の初感染によって発症し、小児では一般に軽症ですが、多数の合併症が存在し、将来の帯状疱疹の発症リスクなどもあるウイルス感染症です。

典型例では、発疹は紅斑から始まり、水疱、膿疱を経て痂皮化して治癒します。発疹の出現前から発熱を認め、出現後も約6日間は感染性があるとされていますので、この間の二次感染にご注意ください。重症のハイリスク群として15歳以上、乳児期後半、免疫不全患者、妊婦等が挙げられます。

予防に有効な水痘ワクチンが2014年10月から定期接種化され、生後12か月~生後36か月に至るまでに3か月以上(標準的には半年から1年)の間隔をおいて2回の接種を行うことになっています。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第13週:平成30年3月26日~4月8日)No.305

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.18件とやや増加しました。京都市左京区で定点あたり13.25件と警報レベルとなっています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が4件、アメーバ赤痢が1件 、侵襲性肺炎球菌感染症が3件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、流行性角結膜炎が4件報告されました。

「赤痢」と呼ばれる病気には、細菌性赤痢とアメーバ赤痢があります。今週定点報告において報告されたアメーバ赤痢は赤痢アメーバという原虫の感染を原因とする病気です。 アメーバ赤痢の原因は大腸に寄生する赤痢アメーバと呼ばれる原虫の一種です。栄養型(いわゆるアメーバー運動をして活発に動く)とシスト型2つの形態を取り、外部環境に強いシスト型を摂取することで経口感染します。具体的には海外旅行などで汚染された飲食物を摂取することや性行為が原因で感染し、典型例は粘血便などの下痢、テネスムス(しぶり腹)、腹痛で発症します。まれに肝膿瘍や脳・肺・皮膚などの腸管外に合併症を来します。細菌性赤痢と原因は異なりますが、ともに赤い便(赤痢)をきたし、感染地域である海外で生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどから感染することが多いです。

海外渡航の折には、厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページなどで、前もって渡航先の国の感染情報などを見て、予防策を確認するようにしてください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第12週:平成30年3月19日~25日)No.304

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

今週、インフルエンザの報告数は定点あたり4.22件となり府内のすべての地域において警報レベル以下となりました。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.00件とよこばいです。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が7件、レジオネラ症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が2件、眼科定点から流行性角結膜炎が8件 報告されました。

2017/2018シーズンのインフルエンザの報告者数は例年に比べ大きく上回りました。ピークであった2018年第5週の全国での定点あたりの報告数は54.33件と1999年4月以降最高となっています。定点医療機関からの報告をもとにした、全国の医療機関を受診した患者数の推計も、2018年第3週から第6週の期間で推計約239~283万人と、近年のピーク時に観察される、週間200万人前後を大きく上回りました。今シーズン第10週までの累積推計受診者数は約2104万人でした。同様に累積入院患者数は18653例とこちらも近年を上回っており、特に70歳以上の高齢者が9955例(53%)を占めました。

近年は、AH3亜型もしくはAH1pdm09亜型が1年間隔で流行の主体となっていたが、今シーズンは、流行の開始頃からB型の割合が高く、B型が流行の主体となっていることが特徴でした。過去にもB型が多くみられた年は大きな流行シーズンとなっています。今年のピークは過ぎましたが、日ごろからの手洗い、うがいなどの手指衛生を徹底し、咳エチケットを守りましょう。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第11週:平成30年3月12日~3月18日)
No.303

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週、定点あたり7.49件と終息に向かっています。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.29件とやや増加しました。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が13件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、アメーバ赤痢と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件 報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、眼科定点から流行性角結膜炎が3件報告されました。

レジオネラ症の報告数が年々増加しています。2017年の報告数は全国で1722件と現在の調査方法となった1999年以降最多でした。ここ10年で約2.5倍に増加しています。増加の原因としては、検査方法の簡便化や抵抗力の少ない高齢者の増加によるものが疑われていますがはっきりとはわかっていません。レジオネラ菌は水中や土の中に存在し、給湯設備や空調の冷却塔、加湿器のなかで増殖します。特に高齢者や糖尿病などに罹患した患者など抵抗力の少ない人で感染が起こりやすく死亡率が高くなることが知られています。水滴とともに吸入することで感染し、発熱や肺炎を発症します。レジオネラ菌は36度前後で最も繁殖しますが、高温や塩素消毒で死滅します。予防として、感染源となる給湯系、冷却塔、浴場、加湿器などの、水環境に対する衛生管理が重要です。治療にはニューキノロンやマクロライド系の抗菌薬が著効します。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント
(2018年第10週:平成30年3月5日~3月11日)
No.302

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

インフルエンザの報告数は今週、定点あたり10.77件まで減少しました。南丹以北ではまだ警報レベルとなっているので注意してください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.39件とよこばいです。

その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、カルバベネム耐性腸内細菌感染症が2件、劇症型溶血性レンサ球菌感染症・後天性免疫不全症候群が、それぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が3件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、細菌性髄膜炎が1件、流行性角結膜炎が7件報告されました。

A群溶血性レンサ球菌の感染により罹患する、重症で生命に関わる劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、子供から大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いことが特徴です。学校やご家庭で接触感染し、突然発病する例があり、四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などを初期症状とします。病状の進行も急激で、数十時間以内には軟部組織の壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)などを引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い疾患です。咽頭培養により菌を分離同定するほか、迅速診断キットを利用して診断し、第一選択薬のペニシリン系抗生剤などの抗菌薬で加療することができますので、疑わしい症状をみた際は早めに医療機関を受診してください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント              

(2018年第9週:平成30年2月26日~3月4日) No.301

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週も低下し、定点あたり17.91件まで減少しました。全国的にも流行はピークアウトしており定点あたり報告数は17.42件でした。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.09件とよこばいです。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、百日咳が1件報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、眼科定点から流行性角結膜炎が5件報告されました。

侵襲性肺炎球菌感染症は、肺炎球菌による髄膜炎や菌血症、敗血症といった重症の病態です。成人では、発熱、咳嗽、息切れを初期症状とした菌血症を伴う肺炎が多くみられますが、小児では、成人と異なり肺炎を伴わず、発熱のみを初期症状とした感染巣のはっきりしない菌血症例が多くみられます。

また細菌性髄膜炎の主な原因菌の一つとなっています。治療はペニシリン系抗菌薬が第一選択です。耐性菌を増やさないために、ペニシリン耐性肺炎球菌に有効な抗菌薬の使用や薬剤感受性試験に基づいた最適な抗菌薬の使用が推奨されています。予防には、肺炎球菌ワクチンの接種が有効です。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第8週:2月19日~25日) No.300

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は3週連続で低下し、定点あたり21.98件まで減少しました。しかしながら依然として府内の全地域で警報レベルとなっており、感染は完全に終息していませんので引き続き注意してください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.21件とよこばいです。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、アメーバ赤痢とカルバペネム耐性腸内細菌感染症がそれぞれ2件、水痘(入院例)が1件、梅毒が3件報告されました。

また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、眼科定点の報告として、急性出血性結膜炎が1件、流行性角結膜炎が6件報告されました。

水痘(入院例)の報告がありました。9歳以下の患者が90%以上を占める小児の病気「水ぼうそう」で、毎年冬から春にかけて流行がみられます。2014年9月から小児科定点からの報告は継続のまま、24時間以上の入院を要した水痘症例が全数届出対象となりました。他疾患で入院中に発症し、その後24時間以上入院した症例も届出対象となっています。

水痘は水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus: VZV)の初感染によって発症し、小児では一般に軽症ですが、多数の合併症が存在し、将来の帯状疱疹の発症リスクなどもあるウイルス感染症です。典型例では、発疹は紅斑から始まり、水疱、膿疱を経て痂皮化して治癒します。発疹の出現前から発熱を認め、出現後も約6日間は感染性があるとされていますので、この間の二次感染にご注意ください。重症のハイリスク群として15歳以上、乳児期後半、免疫不全患者、妊婦等が挙げられます。予防に有効な水痘ワクチンが2014年10月から定期接種化され、生後12か月~生後36か月に至るまでに3か月以上(標準的には半年から1年)の間隔をおいて2回の接種を行うことになっています。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第7週:2月12日~2月18日) No.299

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数はピークをこえ、定点あたり29.40件まで減少しました。先週までに引き続き、府内の全地域で警報レベルとなっており、山城北で37.18件、南丹で36.56件、中丹西で35.80件報告されています。京都市内でも北区以外の全地域で警報レベルとなっています。引き続き感染対策に努めてください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、3.45件とよこばいです。

全数報告対象の感染症は、結核が12件、侵襲性肺炎球菌感染症と梅毒がそれぞれ 2件 報告されました。

また、基幹定点から、マイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、眼科定点から、流行性角結膜炎が1件 報告されました。

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第6週:2月5日~2月11日) No.298

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

インフルエンザの報告数は今週に入り、5週ぶりに減少しました。しかし、定点あたり42.67件と依然感染者数は多く、中丹西の59.40件をはじめとして流行は未だおさまっていません。インフルエンザA型、もしくはB型に感染しても、もう一方には再度感染する可能性がありますので、引き続き予防対策に努めてください。

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は4.19件と横ばいです。

全数報告対象の感染症は結核が6件、ウイルス性肝炎・カルバペネム耐性腸内細菌感染症・梅毒と百日咳がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。

また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が11件報告されました。

今週、百日咳の報告がありました。百日咳はけいれんを伴うような咳発作を来す疾患であり、特に生後6か月未満の乳児では重症化して肺炎や脳炎を起こしたり、死に至る危険性もあります。百日咳にはワクチンが有効であり、現在定期接種の対象となっています。ワクチンにより乳幼児の感染は減少しましたが、ワクチンの抗体価は接種後に徐々に低下していくことがわかっています。

そのため最近では成人の百日咳患者が増えてきています。2010年には成人において百日咳が大流行し、患者全体の50%以上が15歳以上という結果でした。その後も乳幼児に比べ成人の感染が多い状況が続いています。百日咳は抗生物質の内服により治療が可能ですが、大人では症状が軽く気づかないことが多いとされています。

大人が感染源となり、ワクチン接種前の乳児に二次感染する可能性がありますので、子供と接する機会の多い家族の方は咳が続く際は医療機関を早めに受診してください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/