京都府感染症情報センターより

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第19週:5月8~14日) No.259

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点当たり7.70件と先週に比べて増加しています。

流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、咽頭結膜熱(プール熱)の発生数は特に変化はありません。手足口病は定点あたり1.47件、京都市では2.26件とやや増加し、京都市内の南区、右京区、伏見区では警報レベルが継続しています。

全数報告対象の感染症は結核が6件、腸管出血性大腸菌感染症、A型肝炎、レジオネラ症、アメーバ赤痢、水痘がそれぞれ 1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。また、基幹定点からの報告としてロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点からは流行性角結膜炎が9件報告されています。

今週報告がありました腸管出血性大腸菌感染症とA型肝炎は、ともに飲食物からの感染が疑われる疾患です。腸管出血性大腸菌感染症は年間千数百人、A型肝炎は年間500人規模の報告があります。腸管出血性大腸菌感染症の原因となるのはベロ毒素を産生する大腸菌です。わずか50個ほどで症状を発生させ、胃酸の中でも生き残ります。感染者のうち6-7%で溶血性尿毒症症候群(HUS)や急性脳症を発症し、HUSを発症した患者の致死率は1~5%とされています。

かつては日本人の多くがA型肝炎の抗体を保有していましたが、衛生環境の改善に伴って抗体保有率は低下しています。海外渡航が原因の患者は1割程度に過ぎず、国内でも発生していることに注意してください。

最近は気温が上がり、食中毒の危険が高まる季節になっています。肉や海産物はできるだけ火を通して、時間をおかずに食べるようにしましょう。また、これらの感染症は糞口感染ですので手洗いを忘れないようにしましょう。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレスhttp://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターより

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第18週:5月1~7日) No.258

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点当たり4.38件と減少しています。インフルエンザも減少していますが定点当たり1.39件の報告がありました。

流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、咽頭結膜熱(プール熱)、突発性発疹の発生数は特に変化はありません。手足口病は定点あたり1.38件とやや増加し、京都市内では南区、右京区、伏見区で警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は結核が4件、侵襲性肺炎球菌感染症が 1件報告されました。

また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、眼科定点では流行性角結膜炎が2件報告されています。

 

食中毒の原因として、ノロウイルス、カンピロバクターに次いで多いのが

アニサキス症です。2015年には年間127件の報告がされています。これは食中毒統計に届け出された数のみですので、実際には年間7,000人がアニサキス症に罹患していると推定されています。

アニサキス症の典型的な症状は激しい腹痛, 悪心, 嘔吐を呈する急性胃腸炎です。また、アニサキスに対するアレルギー反応として蕁麻疹やアナフィラキシー症状が発現することもあります。魚の生食だけでなく、非加熱の魚の酢じめ等の食品を介しても感染するため、注意が必要です。これから夏にかけては食中毒の報告が多くなる時期となりますので、注意しましょう。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレスhttp://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターより

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第17週:4月24~30)、No.257

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎、インフルエンザともに、それぞれ定点当たり6.03件、2.38件と減少しています。

流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、咽頭結膜熱(プール熱)、突発性発疹の発生数は特に変化はありません。手足口病は府下では定点あたり1.22件ですが、京都市伏見区では3.00件と警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は結核が5件、腸チフスが1件、クロイツフェルト・ヤコブ病及び侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件報告されました。

また、基幹定点からの報告としてロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、眼科定点からは流行性角結膜炎が5件報告されています。

 

今週は京都市の一部で、手足口病が多く報告されました。エンテロウイルスが原因となる手足口病は4歳位までの幼児を中心に夏季に流行します。過去には2011年と2013年に大流行がありました。予後良好な疾患ですが、稀に急性髄膜炎や脳炎などを引き起こすことが知られており、死亡する例もみられます。

感染後3~5日の潜伏期の後、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹が出現します。発熱はあまり伴わず、体温は38度以下のことがほとんどです。

特異的な治療法はなく、発疹にたいして外用薬は用いられません。水分補給と手洗いが重要です。治療後も便からの感染がありえますので、排便後の手洗いを特に徹底してください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレスhttp://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報です!

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第16週:4月17~23日)、No.256

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数が6.30件と増加しています。

流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、咽頭結膜熱(プール熱)、突発性発疹の発生数にも特に変化はありません。

インフルエンザは定点あたり2.60件と先週と変わらず、散発的な発生がみられています。流行が終わったと考えず、手洗い・うがいに留意してください。

全数報告対象の感染症は結核が13件、侵襲性肺炎球菌感染症が1件報告されました。 また、基幹定点の報告として無菌性髄膜炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、眼科では流行性角結膜炎が7件報告されています。

先週、京都市内において海外渡航者が帰国後腸チフスを発症した旨の届出がありました。腸チフス・パラチフスは現在でも日本を除く東アジア、東南アジア、インド亜大陸、中東、東欧、中南米、アフリカなどにまん延し、流行を繰り返しています。衛生状態の改善により、日本で発生するほとんどの症例は海外からの輸入感染症です。

10~14 日の潜伏期の後に39~40℃の発熱で発症し、比較的徐脈バラ疹脾腫が3主徴とされています。原因菌はSalmonella Typhiであり、ニューキノロン系の抗生物質が第一選択となります。しかし、近年では薬剤耐性チフス菌が分離されており、対応がとられています。

チフス菌・パラチフス菌は人間にのみ感染し、病気を起こします。そのため、人の糞便で汚染された食物や水が媒介して感染します。海外渡航時には生水や生肉の飲食を避け、帰国後発熱や下痢などの体調不良があった際はすぐに医療機関を受診してください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレスhttp://www.pref.kyoto.jp/idsc/