京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第24週:令和元年6月10日~令和元年6月16日)No.366

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

手足口病が先週よりさらに増加し、定点あたり6.30件と報告されました。京都府全域で定点あたり5.0件を超え警報レベルとなっています。特に、南丹10.60件、中丹東7.40件、中丹西6.00件、乙訓5.25件と報告されており、京都市でも7.21件となっています。伝染性紅斑は、引き続き乙訓、京都市左京区、伏見区で警報レベルとなっています。咽頭結膜熱が乙訓で警報レベルとなっています。また中丹西ではA群溶血性レンサ球菌咽頭炎が定点あたり5.67件と警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は、結核が15件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、レジオネラ症が2件、後天性免疫不全症候群と風しんがそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が3件、百日咳が2件報告されました。

また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が5件とマイコプラズマ肺炎が1件報告されました。眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が4件報告されました。

今週はさまざまな感染症の報告数が警報レベルに達しました。エンテロウイルス等が原因となる手足口病は、4歳ころまでの幼児を中心に、主に初夏から初秋にかけて流行が見られます。予後良好な疾患ですが時に急性髄膜炎や脳炎などを引き起こすことが知られており死亡例もみられます。感染後3~5日の潜伏期をおいて、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹が出現します。発熱はあまり見られず38度以下のことがほとんどです。特異的な治療法はなく発疹にたいしても外用薬は用いられません。重要なことは水分補給です。咳やくしゃみのしぶき、便にふくまれるウイルスから口を介して感染します。

予防には、手洗いが重要です。治療後も便からの感染がありうるので特に排便後の手洗いを徹底してください。

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第22週:令和元年5月27日~令和元年6月2日)No.364

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は、定点あたり5.87件と減少しました。伝染性紅斑は、先週に引き続き、乙訓、京都市左京区、右京区、南区、伏見区で警報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が7件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症と百日咳がそれぞれ2件、麻しんが 1件報告されました。

また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎と無菌性髄膜炎がそれぞれ1件報告されました。眼科定点の報告として流行性角結膜炎が6件報告されました。

麻疹と風疹の報告数が増加しています。国立感染症研究所は麻疹の報告数が566人となり、すでに昨年1年間の2倍を超えたと発表しました。大阪が142人と最も多く、東京、三重、神奈川、愛知と続いています。東南アジアと同じタイプの遺伝子が検出されており渡航者から広がり国内に定着しつつあると危惧されています。風疹も5月26日までの1週間で全国で44人の患者が報告されており、昨年からの流行が続いています。

ワクチン接種に加え、疑わしい症状が見られた際はすぐに医療機関を受診し感染拡大防止につとめてください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第21週:令和元年5月20日~令和元年5月26日)No.363

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は、定点あたり6.09件と減少しました。伝染性紅斑は、乙訓に加え京都市左京区、右京区、伏見区でも警報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が6件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、アメーバ赤痢・侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件、百日咳が3件報告されました。

また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が5件報告されました。眼科定点の報告として流行性角結膜炎が5件報告されました。

アメーバ赤痢の原因は大腸に寄生する赤痢アメーバと呼ばれる原虫の一種です。栄養型(いわゆるアメーバー運動をして活発に動く)とシスト型2つの形態を取り、外部環境に強いシスト型を摂取することで経口感染します。

具体的には海外旅行などで汚染された飲食物を摂取することや性行為が原因で感染し、典型例は粘血便などの下痢、テネスムス(しぶり腹)、腹痛で発症します。まれに肝膿瘍や脳・肺・皮膚などの腸管外に合併症を来します。

細菌性赤痢と原因は異なりますが、ともに赤い便(赤痢)をきたし、感染地域である海外で生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどから感染することが多いです。海外渡航の折には、厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページなどで、前もって渡航先の国の感染情報などを見て、予防策を確認するようにしてください

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第20週:令和元年5月13日~令和元年5月19日)No.362

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点あたり7.32件と増加しています。伝染性紅斑は、乙訓に加え京都市左京区、右京区、中京区でも警報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が2件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、風しんが1件、百日咳が4件報告されました。また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が7件報告されました。眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が3件報告されました。

伝染性紅斑が一部の地域で流行しています。伝染性紅斑(erythema infectiosum)は、ヒトパルボウイルスB19(Human parvovirus B19)による感染症であり、幼児、学童の小児を中心にみられる流行性の発疹性疾患です。典型例では、両頬に蝶形紅斑が出現し、リンゴのように赤くなることから「リンゴ(ほっぺ)病」と呼ばれることもありますが、本疾患の約4分の1は不顕性感染です。感染経路は、通常、飛沫感染もしくは接触感染です。感染後10~20日の潜伏期間を経て両頬の境界鮮明な紅斑が出現し、続いて腕、脚部にも網目状・レース様の発疹がみられます。感染後1週間前後でインフルエンザ様の症状がでますが、発熱は軽度です。成人では頬の紅斑は少なく、風疹との鑑別が必要になります。2018年から2019年にかけて全国的に流行しています。また、妊娠している方やその可能性のある方は、感染により胎児水腫や流産を起こす場合があります。流行地域の家庭内で調子を崩している小児を妊婦がケアをする場合においては、手洗いの通常以上の徹底や、食器の共有をしないなど注意してください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第19週:令和元年5月6日~令和元年5月12日)No.361

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は、定点あたり5.05件の報告がありました。乙訓での伝染性紅斑は、定点あたり3.25件と今週も引き続き警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が3件、風しんが1件報告されました。

また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件報告されました。眼科定点の報告として流行性角結膜炎が2件報告されました。

国立感染症研究所から麻疹の累積報告がありました。2019年の5月5日までの患者数は467人となり、流行が見られた2014年を上回るペースとなっています。2018年は海外からの旅行者を発端とした集団発生や、外国人就労者を発端とした集団発生、医療機関から広がった集団発生がありました。

麻疹は多くの国で流行しており、国際イベントの開催等による訪日者の増加にともない海外からの持ち込みが予想されます。

持ち込まれても感染が拡大しないよう、抗体保有率を高く維持すること、感染リスクが高い集団でのワクチン接種、患者の早期発見、感染拡大予防が重要となります。疑わしい症状を見た場合は麻疹を念頭において検査、対応をお願いします。

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第17週:平成31年4月22日~平成31年4月28日、

2019年第18週:平成31年4月29日~令和元年5月5日)No.360

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

ゴールデンウィークの影響で定点あたりの報告数は減少しています。乙訓での伝染性紅斑は、今週も引き続き警報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が2件、腸管出血性大腸菌感染症が3件、レジオネラ症が1件、百日咳が1件報告されました。

また、基幹定点の報告として細菌性髄膜炎が1件、マイコプラズマ肺炎が2件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が13件報告されました。眼科定点の報告として流行性角結膜炎が1件報告されました。

長岡京市で5歳の女児が腸管出血性大腸菌O157に感染し死亡していたことが報告されました。感染経路はまだ明らかになっていません。腸管出血性大腸菌感染症は、例年、夏期を中心にみられますが5月頃から10月頃までが流行期とされています。腸管出血性大腸菌は、汚染された水や食品(生肉、野菜など)などを介して経口感染し、またわずか50個ほどの菌で感染しうるため、患者や保菌者の便からの二次感染にも注意が必要です。感染者のうち6-7%で溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を発症し致死率は1-5%に至ります。予防対策として、食肉の十分な加熱処理が最も重要ですが、調理器具の十分な消毒や洗浄、手洗いの励行も大切です。食事前の手洗いを十分に行い、焼く前の生肉などに使用する箸は使い分けてください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第15週:平成31年4月8日~平成31年4月14日)No.358

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり6.55件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が今週も増加しています。その他の感染症は、大きな変化はありません。乙訓と京都市右京区での伝染性紅斑は、今週も引き続き警報レベルとなっています。また、水痘は乙訓で定点あたり1.25件、京都市西京区で1.00件と注意報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が9件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、レジオネラ症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が1件、百日咳が4件、風しんが2件報告されました。また、基幹定点の報告として、細菌性髄膜炎とマイコプラズマ肺炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が18件報告されました。眼科定点の報告として流行性角結膜炎が3件報告されました。

レジオネラ症の報告数が年々増加しています。2017年の報告数は、全国で1722件と現在の調査方法となった1999年以降最多でした。ここ10年で約2.5倍に増加しています。増加の原因としては、検査方法の簡便化や抵抗力の少ない高齢者の増加によるものが疑われていますが、はっきりとはわかっていません。レジオネラ菌は、水中や土の中に存在し、給湯設備や空調の冷却塔、加湿器のなかで増殖します。

特に高齢者や糖尿病などに罹患した患者など抵抗力の少ない人で感染が起こりやすく死亡率が高くなることが知られています。水滴とともに吸入することで感染し、発熱や肺炎を発症します。レジオネラ菌は、36度前後で最も繁殖しますが、高温や塩素消毒で死滅します。予防として、感染源となる給湯系、冷却塔、浴場、加湿器などの、水環境に対する衛生管理が重要です。治療にはニューキノロンやマクロライド系の抗菌薬が著効します。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第14週:平成31年4月1日~平成31年4月7日)No.357

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり5.89件と増加しています。その他の感染症は大きな変化はありません。乙訓と京都市右京区での伝染性紅斑は、今週も引き続き警報レベルとなっています。また、水痘は京都市上京区で定点あたり1.00件、乙訓で定点あたり1.67件と注意報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が10件、レジオネラ症が1件、カルバベネム耐性腸内細菌感染症・侵襲性肺炎球菌感染症と百日咳がそれぞれ3件、報告されました。また、基幹定点の報告としてロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、眼科定点の報告で流行性角結膜炎が3件報告されました。

風疹の患者報告数が増加しています。2019年第1~14週の累積患者数は1202人と1000人を超えました。風疹は2013年の流行以降、年間100人前後で推移していましたが、2018年には2937人が報告され、2019年もすでに1000人を超える報告があります。関東地方からの報告が多いですが、京都府からも複数の報告がされています。報告されている風疹患者の中心は、過去にワクチンを受けておらず、風疹ウイルスに感染したことがない、抗体を保有していない集団であり、これらの方々への対策が重要です。また妊娠出産年齢の女性の抗体保有率は95%以上と高値ですが、抗体価が低い方もおられますので、妊娠20週頃までの風疹ウイルス感染には注意が必要です。近年、風疹患者の中心は小児から成人へとうつっており、先天性風疹症候群の予防のためにも女性は妊娠前2回の風疹ワクチンを接種し、さらに周囲の方のもワクチン接種を行うことが重要です。風疹はワクチンで予防可能な疾患です。

厚生労働省はこれまで風疹の定期接種を受ける機会のなかった男性を対象に抗体検査とワクチン接種を行うことを発表しましたので、お住いの自治体ホームページなどで確認してください。京都府風疹情報

 

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(2019年第13週:平成31年3月25日~平成31年3月31日)No.356

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり5.62件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が漸増しています。その他の感染症は大きな変化はありません。乙訓と京都市右京区での伝染性紅斑は、今週も引き続き警報レベルとなっています。また、水痘は乙訓で定点あたり1.25件と注意報レベルとなっています。全数報告対象の感染症は、結核が3件、腸管出血性大腸菌感染症が3件、A型肝炎が1件、後天性免疫不全症候群が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、梅毒が5件、百日咳が6件、風しんが2件報告されました。また、基幹定点から細菌性髄膜炎が1件、眼科定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が11件報告されました。

ロタウイルスによる感染性胃腸炎の報告が多く見られました。ロタウイルスは、特に乳幼児の重症急性胃腸炎の主要な原因病原体で、ロタウイルス感染症により世界の5歳未満の小児で約50万人の死亡があるとされています。その多くは発展途上国で起こっていますが、ロタウイルスは、感染力が非常に強いため衛生状態が改善されている先進国でも感染は多く見られ、生後6カ月から2歳をピークに、5歳までにほぼすべての児がロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症するとされています。通常2日間の潜伏期間をおいて発症し、発熱と嘔吐から症状が始まり24~48時間後に頻繁な水様便を認めます。成人でも感染、発病しピークは20~30歳代と50~60歳代に認められます。

主な感染経路は糞口感染ですのでオムツの適切な処理、手洗いの徹底、汚染された衣類等の次亜塩素酸消毒などによる処置が感染拡大防止の基本となります。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2019年第10週:平成31年3月4日~平成31年3月10日)No.353

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり4.86件、その他の感染症も大きな変化はありません。京都市山科区で伝染性紅斑が定点あたり1.40件と警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は、結核が10件、デング熱が2件、侵襲性肺炎球菌感染症・百日咳と風しんがそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告としてマイコプラズマ肺炎が3件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が6件、眼科定点の報告として、流行性角結膜炎が1件報告されました。

デング熱の報告が1件ありました。蚊が媒介するウイルス感染症で、3~7日の潜伏期間の後に突然の発熱で発症し、筋肉痛、関節痛、眼の奥の痛みを伴います。体幹から拡がる発疹を伴い、7日間ほどの経過で改善することが多いです。国内感染症例の報告もありましたが、多くは熱帯・亜熱帯地域(特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国)への海外渡航時に感染したものです。デングウイルスに対する抗ウイルス薬は無く、症状に応じて鎮痛剤の投与や輸液が行われます。またワクチンもないため、蚊に刺されないように予防対策をすることが重要となります。

 

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