京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第27週:平成30年7月2日~7月8日)No.319

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、4.83件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。また7月10日には平成30年第1号となる食中毒注意報が京都府南部地域に発令されました。食中毒注意報は気温や湿度等の条件から食中毒の危険が高まった際に発令されます。

また手足口病が定点あたり1.61件と増加しています。京都市右京区では定点あたり6.00件と警報レベルとなっており注意が必要です。その他の感染症は先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が14件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、A型肝炎が1件、レジオネラ症が3件、後天性免疫不全症候群と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、マイコプラズマ肺炎が2件、流行性角結膜炎が4件報告されました。

エンテロウイルスが原因となる手足口病は、4歳頃までの幼児を中心に主に夏季に流行が見られます。過去には2011年、2013年、2015年に流行がみられました。予後良好な疾患ですが時に急性髄膜炎や脳炎などを引き起こすことが知られており死亡例もみられます。感染後3~5日の潜伏期をおいて、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2~3mmの水疱性発疹が出現します。発熱はあまり見られず38度以下のことがほとんどです。特異的な治療法はなく発疹にたいしても外用薬は用いられません。重要なことは水分補給です。手洗いが重要であり、治療後も便からの感染がありうるので特に排便後の手洗いを徹底してください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第26週:平成30年6月25日~7月1日)No.318

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.53件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が12件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、A型肝炎が2件、レジオネラ症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、百日咳が3件報告されました。また、基幹定点から細菌性髄膜炎が1件、マイコプラズマ肺炎が3件、眼科定点から流行性角結膜炎が6件報告されました。

今週はA型肝炎と腸管出血性大腸菌感染症の報告がありました。どちらも経口感染し食中毒の原因となる疾患です。A型肝炎は、海外の汚染された食物や水の摂取のほか国内ではカキやアサリなどの二枚貝を含む魚介類による食中毒の原因となります。腸管出血性大腸菌は少量の菌で感染を引き起こすことが知られ感染者の便から二次感染を起こします。A型肝炎は、ワクチンによる予防が可能なので、流行地域に渡航する際には接種しておくことが大切です。

腸管出血性大腸菌感染症は、これから流行時期に入りますので、調理器具の消毒を入念に行ってください。また、食事前の手洗いうがいを行って2次感染の予防につとめてください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第25週:平成30年6月18日~6月24日)No.317

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.73件と先週からさらに減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が8件、A型肝炎が2件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症と播種性クリプトコックス症がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件、百日咳が5件報告されました。また、基幹定点からロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が5件報告されました。

播種性クリプトコックス症の報告が1件ありました。クリプトコックス属真菌は、主に肺や皮膚から感染して病巣を形成します。肺クリプトコックス症が多いですが、中枢神経系に播種して脳髄膜炎を起こすこともあります。感染源としてハトなどの鳥の糞との関与が示唆されており、環境中に浮遊する真菌を吸入して、あるいは創傷のある皮膚などを介して感染します。腎疾患、膠原病、悪性腫瘍、糖尿病やステロイド投与などがクリプトコックス症のリスク因子であり、ヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)感染はクリプトコックス脳髄膜炎のハイリスクとなります。免疫不全の場合、脳髄膜炎として発症することが多く、発熱、頭痛などの症状を呈します。免疫不全でない場合、中枢神経系の病変では、痙攣、意識障害など重篤な症状がみられる症例から、発熱、頭痛等の典型的な脳脊髄炎症状を欠く症例まで様々とされます。中枢神経系以外の眼、皮膚、骨等への播種では皮疹など局所に応じた症状を呈します。治療として、播種性病変の場合、アムホテリシンB製剤とフルシトシンを併用して初期治療を行い、その後アゾール系薬にスイッチして維持療法が行われます。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第24週:平成30年6月11日~6月17日)No.316

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、6.27件と先週から減少しました。京都市左京区での警報レベルは継続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、レジオネラ症が2件、劇症型溶血性レンサ球菌感染症と百日咳がそれぞれ1件 報告されました。また、基幹定点の報告として、流行性角結膜炎が6件報告されました。

腸管出血性大腸菌は、汚染された水や食品(肉、野菜等)などを介して経口感染し食中毒の原因となることが知られており、溶血性尿毒症症候群(HUS)など重篤な合併症を引き起こすこともあります。例年6月から10月頃までの夏場に多く報告されています。少量の菌で感染しうるため、患者や保菌者の便から2次感染します。食肉を十分加熱処理し、細菌を死滅させることが最も重要ですが、調理の途中で調理器具や食品が汚染されることにより食中毒につながります。

そのため、調理器具の消毒・手入れなどの衛生に留意することも食中毒の予防に重要です。食事前の手洗いを十分に行うことでヒトからヒトへの2次感染を予防してください。また、腸管出血性大腸菌に限らず細菌による食中毒は夏期に多くなっていますのであわせて注意してください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第23週:平成30年6月4日~6月10日)No.315

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、7.69件と先週までと同水準です。京都市左京区では定点あたり23.00件と警報レベルとなっています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が7件、重症熱性血小板減少症候群が1件、アメーバ赤痢と百日咳がそれぞれ1件 、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。

また、基幹定点の報告として、マイコプラズマ肺炎とロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、流行性角結膜炎が2件報告されました。

重症熱性血小板減少症候群は、2011年に特定されたSFTSウイルスに感染することによって引き起こされる病気で、発熱と消化器症状や血小板減少による出血傾向などを発症し、重症化することもあります。国内では2013年1月に初めて感染が確認され以後、西日本を中心に報告があります。SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染し、致死率は6.3~30%と報告されています。マダニは屋外に生息しており、家庭内に生息するダニとでは全く種類が異なります。抗ウイルス薬やワクチンはありませんので、マダニに咬まれないようにすることが重要です。森林や草地などから戻ったら、特にわきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭部などをチェックし、もし吸血中のマダニに気がついた場合は、医療機関(皮膚科)で処置(マダニの除去、洗浄など)を受けてください。

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第22週:平成30年5月28日~6月3日)No.314

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、7.88件と全国的に上昇しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、細菌性赤痢と腸管出血性大腸菌感染症がそれぞれ1件、ウイルス性肝炎・急性脳炎・クロイツフェルト・ヤコブ病がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、無菌性髄膜炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が4件、流行性角結膜炎が6件報告されました。

感染性胃腸炎の報告が増加しています。例年12月にピークがありますが20週前後にも増加し、夏に向けてやや減少していく傾向にあります。1歳前後が最も多く、5歳以下で約6割を占めていますが家庭内での感染拡大も懸念されますのでご注意ください。

クロイツフェルト・ヤコブ病の報告が1件ありました。クロイツフェルト・ヤコブ病は、正常プリオン蛋白が何らかの理由で伝播性を有する異常プリオン蛋白に変化し、主に中枢神経内に蓄積することにより急速に神経細胞変性をおこす稀な致死性疾患であるプリオン病の一種です。病因により、特発性(孤発性)、プリオン蛋白遺伝子変異による遺伝性、他のプリオン病からの感染による獲得性(医原性、変異型)の3種類に分類されています。2003年より五類感染症に分類されており、診断後7日以内に保健所へ報告することが義務づけられています。本疾患の有病率は100万人に1人前後で、男女差はなく、発病は50~70歳代に多く、わが国のサーベイランス調査によると、孤発性が76.5%、遺伝性が19.0%、獲得性が3.9%となっています。治療は確立されておらず、孤発性症例では進行が速く1~2年で死亡の転帰をとりますが、遺伝性や一部の孤発性症例は進行が遅く数年に及ぶものもあります。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第20週:平成30年5月14日~20日)No.312

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、7.27件と増加しました。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が6件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、A型肝炎とレジオネラ症がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症と百日咳がそれぞれ3件、梅毒が2件、風しんが1件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が3件、急性出血性結膜炎が1件、流行性角結膜炎が9件報告されました。

発疹と発熱を伴う疾患は様々です。症状のみでの正確な診断は困難ですが、発熱や発疹のパターンはある程度異なっています。乳幼児期に多い突発性発疹では、まず40度近い高熱が出現し、解熱とともに全身性の発疹が出現します。

麻疹ではカタル期に高熱となり、その後一過性に解熱することがありますが、その後再度発熱がおこり全身に発疹が出現します。特徴的なものとして口腔内のコプリック斑が知られています。一方、風疹では発熱は全体の半数ほどにしかみられず麻疹に比べて高熱の期間は短いことが多いです。発疹は首の回りからはじまって全身に広がります。風疹に伴う最大の問題は、感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が感染したことにより、風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群が出現することです。

女性の方は感染予防に必要な免疫を妊娠前に獲得しておくことが重要です。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第19週:平成30年5月7日~13日)No.311

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、6.82件と増加しました。乙訓では定点当たり17.00件と顕著に増加していますので注意してください。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が9件、細菌性赤痢が4件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が4件、アメーバ赤痢・カルバペネム耐性腸内細菌感染症と百日咳がそれぞれ1件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が2件、流行性角結膜炎が9件報告されました。

「赤痢」と呼ばれる病気には、細菌性赤痢とアメーバ赤痢があります。今週定点報告においてともに報告されていますが細菌性赤痢の原因は赤痢菌(Shigella)であり、アメーバ赤痢は赤痢アメーバという原虫の感染を原因とする別の病気です。

細菌性赤痢は、患者の便に汚染された手指や食べ物を原因として、経口感染により拡がります。感染力が強く少ない菌量でも感染しうるため、二次感染に対して注意が必要です。

アメーバ赤痢の原因は大腸に寄生する赤痢アメーバと呼ばれる原虫の一種です。栄養型(いわゆるアメーバ運動をして活発に動く)とシスト型の2つの形態を取り、外部環境に強いシスト型を摂取することで経口感染します。具体的には海外旅行などで汚染された飲食物を摂取することや性行為が原因で感染し、典型例は粘血便などの下痢、テネスムス(しぶり腹)、腹痛で発症します。まれに肝膿瘍や脳・肺・皮膚などの腸管外に合併症を来します。

原因は異なりますが、ともに赤い便(赤痢)をきたし、感染地域である海外で生水、氷、生野菜や生の魚介類、カットフルーツなどから感染することが多いです。海外渡航の折には、厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページ(http://www.forth.go.jp)などで、前もって渡航先の国の感染情報などを見て、予防策を確認するようにしてください。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント

(2018年第18週:平成30年4月30日~5月6日)No.310

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、2.97件と減少しました。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が1件、レジオネラ症が2件、アメーバ赤痢が1件報告されました。また、基幹定点の報告として、細菌性髄膜炎が1件、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が5件、流行性角結膜炎が6件報告されました。

沖縄県は麻疹の感染のピークは過ぎ、終息に向かいつつあるとしています。沖縄県内で、調査中も含めた検査診断例は5月9日の時点で95例と報告されており、予防接種を2回行った方にも感染者がでています。

また大型連休で多くの人が国内外で移動をしたことにより依然として感染拡大が懸念されます。

母子手帳などでワクチン接種歴がない、もしくは1回のみの方はワクチン接種を行い予防してください。非常に感染力が強いので、発熱に加えて特徴的な発疹が見られた際は周囲への感染に留意してすぐに医療機関を受診してください。

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京都府感染症情報センターからのコメント(2018年第16週:平成30年4月16日~22日)No.308

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎の京都府全体での定点当たり報告数は、5.13件と横ばいですが4週連続で増加しています。京都市左京区の警報レベルは持続しています。その他の感染症の報告も先週までと比べて著変ありません。

全数報告対象の感染症は、結核が20件、アメーバ赤痢・カルバベネム耐性腸内細菌感染症と百日咳がそれぞれ1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。また、基幹定点の報告として、ロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、流行性角結膜炎が10件報告されました。

百日咳はけいれん性の咳発作を特徴とする疾患であり、主に小児期にみられます。しかし、ワクチン接種をしていない方や、接種後免疫の低下した成人でも発症がみられるため注意が必要です。

2017年12月31日までは、指定届出機関である全国約3,000カ所の小児科定点医療機関が週毎に保健所に届け出なければならないとされていました(5類感染症)が、2018年1月1日から、適切な検査診断で百日咳と診断された症例は年齢を問わず全数把握疾患として報告するようにと改正されました。診断した医師は、都道府県知事に対して、患者の年齢、性別等を7日以内に届け出なければならないとされていますのでご協力お願いします。また学校保健安全法では、第2種感染症に指定されており咳が止まるまで、もしくは適正な抗菌薬治療が終了するまでは出席停止となっています。

 

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