京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第47週:11月20~26日) No.287

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点あたり4.65件で、3週連続で増加しています。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、手足口病、RSウイルス感染症、流行性耳下腺炎、ヘルパンギーナの発生数は大きく変化はありません。

全数報告対象の感染症は、結核が5件、レジオネラ症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が2件報告されました。また、眼科定点から流行性角結膜炎が4件報告されました。

感染性胃腸炎の報告数が徐々に増えてきています。警報レベルには達していませんが、例年12月に入ってから報告数が増加しますので、これからの季節はさらに注意が必要です。 気温や室温が低くなりますが、非加熱の食品をとることは避け、保存は冷蔵庫で行ってください。

また、ノロウイルスの増加も危惧されますので、手洗いで予防し、特に乳幼児の排泄物の処理は適切に行ってください。

 

京都府感染症情報センターホームページのアドレス

http://www.pref.kyoto.jp/idsc/

京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第46週:11月13~19日) No.286

 

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点あたり4.25件と先週からさらに増加しています。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、手足口病、RSウイルス感染症、流行性耳下腺炎、ヘルパンギーナの発生数は大きく変化はありません。中丹西で急性出血性結膜炎の報告があり、警報レベルとなっています。

全数報告対象の感染症は結核が7件、侵襲性インフルエンザ菌感染症が1件、侵襲性肺炎球菌感染症が4件報告されました。また、基幹定点から無菌性髄膜炎とマイコプラズマ肺炎が1件、眼科定点から急性出血性結膜炎が1件、流行性角結膜炎が7件報告されました。

今週報告のあった侵襲性インフルエンザ菌感染症はグラム陰性短桿菌であるインフルエンザ菌が血液や髄液から検出されるものです。インフルエンザ菌は幼児と高齢者に多くみられますが、小児では保菌率が高く、髄膜炎、敗血症、中耳炎、副鼻腔炎等の原因となることが知られています。

我が国では2008年12月にHibワクチンの任意接種がはじまり、2013年4月の予防接種法改正にともない定期接種のひとつとなっています。Hibワクチンが定期接種となってから侵襲性インフルエンザ感染症(主に髄膜炎)は減少傾向にあります。

小児だけでなく成人、とくに高齢者でも高リスクの方はワクチン接種を行い、重症肺炎の予防を行うことが必要です。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第43週:10月23~29日) No.283

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点あたり3.64件と今週も先週からやや増加しています。手足口病は定点当たり1.56件と横ばいで推移しています。

RSウイルス感染症、流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナの発生数は大きく変化はありません。

全数報告対象の感染症は結核が13件、オウム病が1件報告されました。カルバベネム耐性腸内細菌感染症と急性脳炎がそれぞれ1件報告されました。

また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎とロタウイルスによる感染性胃腸炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が4件報告されました。

オウム病はオウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)による人獣共通感染症です。感染様式としては病鳥の排泄物からの吸入が主体ですが、餌の口移しや、噛まれて感染することもまれにあるといわれています。鳥は保菌していても異常を示さないことが多いので注意が必要です。

オウム病の潜伏期間は1~2週間で、急激な高熱と咳嗽で発症します。軽症の気道感染症でおさまることもありますが、肺炎や髄膜炎を引き起こすこともあります。非定型肺炎ではマイコプラズマ肺炎や肺炎クラミジア肺炎とともに鑑別が必要です。確定診断にはペア血清の評価が必要となりますが、鳥との接触歴の確認が重要です。テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質で治療を行います。

妊婦では免疫力が低下しており感染の危険が高まりますので、ペットの鳥や公園の鳩などとの接触には気をつけてください。ペットで鳥を飼っている方は濃厚接触を避け、鳥が弱っている時や排菌が疑われる場合には、獣医の診察を受けさせましょう。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第42週:10月16~22日) No.282

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点あたり3.45件と先週からやや増加しています。京都市左京区の警報は解除されました。RSウイルス感染症は1.03件とやや低下し、手足口病が定点当たり1.64件と増加しています。流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナの発生数は大きく変化はありません。

全数報告対象の感染症は、結核が15件、レジオネラ症が 2件報告されました。また、基幹定点から流行性角結膜炎が 1件 報告されました。

今年は、RSウイルス感染症や手足口病など本来の流行期以外の時期での流行が見られています。明らかな原因は不明ですが、通年にわたっての感染予防が重要となってきます。トイレ等の後の手洗いや外出後のうがいを行い、汚染された食物の摂取(特に生食)を避けるようにしてください。多くの疾患で特異的な治療法はなく、対処療法が中心となります。高熱が続く場合や意識障害、呼吸困難、血便など様子がおかしいと感じたらすぐに医療機関を受診してください。

これからの季節はRSウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎、インフルエンザなどの流行が懸念されます。今の時期から手洗い、うがい、マスク等の予防策をしっかりとるようにしましょう。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第41週:10月9日~15日) No.281

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎は定点あたり2.82件と先週から減少していますが、京都市左京区では定点あたり17.5件と警報レベルが持続しています。

RSウイルス感染症は1.29件とやや低下、手足口病、流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナの発生数に大きな変化はありません。

全数報告対象の感染症は、結核が17件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、E型肝炎が1件、レジオネラ症が1件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症・侵襲性肺炎球菌感染症と梅毒がそれぞれ1件報告されました。また、眼科定点から流行性角結膜炎が5件報告されました。

E型肝炎は経口感染をおこす肝炎ウイルスです。A型肝炎も同様に経口感染しますが、致死率はE型肝炎が約10倍高く、特に妊婦が感染するとそのリスクは高まります。日本人のE型肝炎ウイルスに対する抗体保有者は約5%とされ、特に若年者はほとんどもっていません。

潜伏期間は約6週間程度あり、その後急性肝炎を起こします。E型肝炎の特徴の一つとして、妊婦で劇症肝炎の割合が高く、致死率が20%にも達することがあるので特に注意が必要です。

日本での感染の原因はジビエ(フランス語:狩猟によって食材として捕獲された野生の鳥獣の狩猟肉で、畜産との対比として使われることが多い)料理などの摂取がほとんどです。豚、シカ、イノシシなどの野生動物は生食をせず、中心部まで火が通ったものを食べるようにしてください。

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第39週:9月25日~10月1日) No.279

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

今週は府内で警報レベルの疾患はありません。

感染性胃腸炎が定点あたり3.34件、RSウイルス感染症が2.00件とともに先週からやや増加しています。

手足口病、流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナの発生数は大きく変化はありません。

全数報告対象の感染症は結核が12件、腸管出血性大腸菌感染症が1件、レプトスピラ症が1件、レジオネラ症が1件 、カルバペネム耐性腸内細菌感染症が1件、梅毒が3件報告されました。また、眼科定点から流行性角結膜炎が6件報告されました。

ワイル病の名前で知られるレプトスピラ症はスピロヘータという細菌の感染症の一種です。ドブネズミなどの保菌動物の尿に汚染された水や土壌から経皮的、経口的に感染します。近年でも沖縄県などで散発的な発生がみられ、特に河川など水辺のレジャーに従事する人の間での感染が増加しています。また、海外では中南米や東南アジアの熱帯、亜熱帯の国々で流行がみられており、輸入感染症としても注意が必要です。

感染すると5~14日間の潜伏期を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋痛、腹痛、結膜充血などが生じ、第4~6病日に黄疸や出血傾向がみられます。水辺での活動歴があり、発熱、肝機能異常、腎機能異常を認めた場合はレプトスピラ症を疑い適切な治療を行ってください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第40週:10月2日~8日) No.280

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり3.92件と先週から増加しています。京都市左京区では定点あたり22.0件と警報レベルとなっています。RSウイルス感染症は1.70件とやや低下しました。

手足口病、流行性耳下腺炎、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナの発生数は大きく変化はありません。

全数報告対象の感染症は腸管出血性大腸菌感染症が1件、レプトスピラ症が1件、レジオネラ症が2件、劇症型溶血性レンサ球菌感染症と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件報告されました。また、眼科定点から流行性角結膜炎が4件報告されました。

京都府ではまだそれほど報告は多くありませんが、首都圏などでは9月からインフルエンザの流行が見られています。学年・学級閉鎖はすでに17都道府県にのぼっています。夏には患者数が減るインフルエンザですが、今年は定点医療機関の患者数が8月上旬で約1,000人、9月も約900人と昨年の3倍以上となりました。夏に流行した理由は不明ですが、夏でも流行がみられるアジア各地からの旅行により持ち帰った可能性や気候変動による可能性が疑われています。

急に気温が下がってきたこれから、インフルエンザのシーズンは本番を迎えますので、うがい、手洗いを徹底するとともに、発熱や関節痛等の症状が出た際はインフルエンザを疑って医療機関を受診してください。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第38週:9月18日~24日) No.278

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

今週は府内で警報レベルの疾患はありません。感染性胃腸炎が定点あたり2.78件、RSウイルス感染症が1.81件とともに先週からやや減少しています。手足口病、流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、流行性角結膜炎の発生数は大きく変化はありません。

全数報告対象の感染症は結核が2件、腸管出血性大腸菌感染症が2件、デング熱が1件、レジオネラ症が2件 、カルバペネム耐性腸内細菌感染症と侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ1件、梅毒が2件報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が2件、眼科定点から流行性角結膜炎が7件報告されました。

レジオネラ症はもともと土壌などの自然環境に存在するレジオネラ属菌への感染により発症します。冷却塔、給湯系、渦流浴などの人工環境においてアメーバと共生して増殖することが知られています。病原体に曝露された誰しもが発症するわけではありませんが、レジオネラ肺炎は市中肺炎の約5%を占めるといわれているため、肺炎症状を認めた際は尿中抗原検査などが重要となります。特に、高齢者や新生児だけでなく、大酒家、重喫煙者、透析患者、糖尿病患者など抵抗力の少ない人がハイリスク群となっています。予防として、感染源となる給湯系、冷却塔、浴場など水環境に対する衛生管理が重要です。治療は静注用のニューキノロン系薬が第一選択剤となっています。

 

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京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第37週:9月11日~17日) No.277

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

RSウイルス感染症が2.66件とやや増加しています。RSウイルス感染症は4週連続で増加しています。RSウイルス感染症は例年季節性インフルエンザに先行して、夏頃より始まり秋に入ると患者数が急増し、年末をピークに春まで流行が続くことが多いとされています。これらの予防には手洗いやうがい等の一般的な予防対策が重要です。引き続き、手洗い等を励行してください。

今週は感染性胃腸炎の報告はやや減少しましたが、腸管出血性大腸菌の報告が4件あり、予断を許さない状況です。手足口病、流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、流行性角結膜炎の発生数に大きな変化はありません。   全数報告対象の感染症は結核が5件、腸管出血性大腸菌感染症が4件、マラリアが1件、カルバペネム耐性腸内細菌感染症が2件、侵襲性インフルエンザ菌感染症が1件、梅毒が3件報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎と無菌性髄膜炎が1件、眼科定点から流行性角結膜炎が8件報告されました。  先週報告があったデング熱や今週報告があったマラリアなど蚊媒介感染症も散見されます。海外渡航者や帰国者の発熱や皮疹をみた場合は輸入感染症も疑う必要があります。いずれも重症化の危険がある疾患ですので、海外渡航後に体調を崩された方は医療機関を受診するようにしましょう。

 

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京都府感染症情報センターからの情報

京都府感染症情報センターからのコメント(2017年第36週:9月4日~10日) No.276

京都小児重症患者診療情報システム管理部 長村敏生

 

感染性胃腸炎が定点あたり3.14件、RSウイルス感染症が2.32件と先週から増加しています。手足口病は定点あたり1.49件と増加し、今週も京都市伏見区のみ警報レベルが続いています。また、南丹において咽頭結膜熱が定点あたり5.20件と警報レベルとなっています。流行性耳下腺炎、A群溶血レンサ球菌咽頭炎、流行性角結膜炎の発生数は大きく変化はありません。

全数報告対象の感染症は結核が7件、デング熱とレジオネラ症がそれぞれ1件、カルバベネム耐性腸内細菌感染症、 後天性免疫不全症候群、侵襲性肺炎球菌感染症がそれぞれ 1件報告されました。また、基幹定点からマイコプラズマ肺炎が2件、眼科定点から流行性角結膜炎が12件報告されました。

全国から腸管出血性大腸菌O-157による食中毒、死亡例の報告がありました。腸管出血性大腸菌は75℃以上、1分間以上の加熱で死滅するので、十分な加熱は有効な予防方法になります。しかし、様々な食品や食材から菌が見つかっていることから、食中毒予防の3原則:①つけない(調理前には必ず手洗い)、②ふやさない(生鮮食品はすぐに冷蔵庫へ)、③やっつける(食材を中心までよく加熱)を常に実施し、腸管出血性大腸菌の感染を予防しましょう。

また、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性腸炎と比べ、溶血性尿毒症症候群(HUS)などにより重症化するリスクが高いため十分注意し、血便などが認められた際は医療機関を受診してください。

 

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